介護施設の魅力【介護の「今」】

AI要約

多くの人が自宅で最期を迎えたいと思っているが、実際には17%程度しか実現しておらず、介護施設や医療機関での最期も珍しくない現状。

介護施設での最期も有効な選択肢であり、個室や広い共用スペースなど暮らしやすさが特長。患者の尊厳を保ちながらサポートすることが可能。

自宅との比較を通じて、介護施設のポテンシャルを詳細に掘り下げ、最期の場所選びについて考える。

介護施設の魅力【介護の「今」】

人生の最終章をどこで送るか(送りたいか)。さまざまな調査では、「自宅」が最も多い。

 厚生労働省の「令和4(2022)年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によれば、一般国民の約44%、医師・看護師・介護支援専門員(ケアマネジャー)の専門職では、56~58%が、自宅で最期を迎えたいと答えている。その理由としては、「住み慣れた場所で最期を迎えたいから」「最期まで自分らしく好きなように過ごしたいから」「家族等との時間を多くしたいから」という回答が多い。

 しかし、実際に自宅で死亡する人は約17%で、意に添わない死に場所を選ばざるを得ない人がいまだに多い(厚労省令和4年人口動態統計)。つまり、多くの人が住み慣れない場所で、自分らしさの実現を諦め、家族から離れて人生の最終章を送らざるを得ないという現実がある。

 前出の意識調査では、自宅以外で最期を迎えることを希望した人にその理由を聞いている。それによると、「介護してくれる家族等に負担がかかるから」が圧倒的に多い。

 家族への負担を軽減するために、自分の真の願いを封印する人が多いのだ。

 自宅以外で最期を迎えたい人は、医療機関と介護施設のどちらを希望するのか。意識調査では、介護施設よりも医療機関の希望がいまだに多数を占めている。

 一般国民は4.1倍、医師は2.7倍、看護師は4.5倍、介護支援専門員は3.6倍の人が介護施設よりも医療機関を希望する。実際、人口動態統計では、約66%の人が医療機関で最期を迎えるのに対し、介護施設は16%に満たない。ちなみに、自宅で最期を迎える人は、17.4%となっている。

 それほどまでに、介護施設は人生の最終章を送る場所として、ふさわしくないのだろうか。

 ある介護施設の施設長は「介護施設でターミナルケアを実施することは十分に可能になっている」と前置きした上で、「最期のその日まで、その人らしく暮らすことをスタッフ全員で支えることができるのが介護施設だ」と強調する。

 介護施設は病院と比べ、患者(入所者)1人当たりの居住スペースが広い。病院では多床室がいまだに主流であるのに対し、介護施設では個室が多くなっている。食堂やリハビリ室、行事やレクリエーションなどの活動を行うための共用スペースも広い。さらに、人生の最終幕の際に、病院のように点滴などのチューブにつながれたままの状態になることは少ない。

 つまり、介護施設は自宅での療養生活が不可能な場合に選び得る、魅力的な選択肢と言える。

 ここで、自宅での暮らしと比較しながら、介護施設のポテンシャル(可能性としてもっている能力)を列挙していきたい。