リニア水位低下問題、JR東海「湧水1日2000トン川に放流」 専門家「相関が明確」岐阜県審査会

AI要約

リニア中央新幹線のトンネル掘削工事による水位低下の問題で、JR東海は湧水の調査と対策を進めている。

専門家は湧水と水位低下の関連性を指摘し、対策の効果を期待している。

環境保全措置に配慮が欠けていた点が指摘され、JRは今後の検討を約束している。

リニア水位低下問題、JR東海「湧水1日2000トン川に放流」 専門家「相関が明確」岐阜県審査会

 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で井戸などの水位が低下した問題で、県は29日、県環境影響評価(アセスメント)審査会の地盤委員会を開いた。JR東海は同町の日吉トンネル掘削現場で続く湧水の状況について、3月下旬以降、1日当たり2千トン前後の水を河川へ放流していることを明らかにした。専門家は「水位低下と相関が明確」と指摘。JRは「湧水を全力で止めることに注力している。その先の水位低下への効果を期待し、しっかりとやっていく」とした。

 JRからは中央新幹線推進本部の梅村哲男名古屋建設部担当部長や加藤覚岐阜西工事事務所長らが出席。湧水に関し、1回目は「(昨年)12月7日以降」に発生したと説明した。最大で毎秒40リットルが出て、排水先の南垣外非常口ヤード(同市日吉町)で河川に放流された量は同月11日ごろに1日当たり2千数百トンとなったが、約2週間で収束したという。

 2回目の湧水は「概(おおむ)ね(今年)2月15日以降」に発生。現在も延長約50メートルの区間で1分当たり1・2トンほどが出続けている。4月中旬には放流量が1日当たり2500トンを超えた日もあった。観測用井戸の水位低下が確認されたのは2月20日で時期が重なり、委員長の神谷浩二岐阜大工学部教授は「湧水と水位低下との因果関係が明確になっているという印象を持つ。さらに湧水対策の検討を」と提言。JRは今月20日からトンネル内壁の透水性を弱める薬液の注入を始めており、担当者は「湧水を止めることで(減水した)地下水が回復することを期待している」とした。

 沢田和秀岐阜大工学部教授は「止水できたところで(回復)効果がどう表れるか分からない」と主張。吉田英一名古屋大教授は「湧水を止めたら井戸水が回復するのかが一番のポイント。抜けてしまった水がどういった水なのか、など地下構造と密接に絡む」と述べ、地中での水の流れ「水(みず)みち」の調査が必要とした。

 また、神谷教授は「5月に入ってようやく減水対策。2月に水位低下の兆候を見て、なぜすぐ(対策に)入れなかったのか。環境をいかに修復するかという視点が(JR)に欠けていたのでは」と指摘した。

 JRの梅村担当部長は会合後、環境保全措置への配慮が欠けていたとの指摘に「課題として今後、検討していきたい」と答えた。