【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】無名 中国が舞台 スパイの悲哀

AI要約

1940年代の中国を舞台に、不条理なスパイの日常を悲哀たっぷりに描いた本作。侵略を続ける日本、蒋介石率いる国民党、国民党に対抗しつつある共産主義。3者間をおのおのの立場のスパイたちが涼しい顔で往来し、暗躍する。

日本はもちろん、蒋介石への不満が広がりつつある中、共産党にすがろうとする人々の心を、スパイたちは恐怖でつなぎ留める役割を担う。もちろん共産党からもスパイは放たれる。その後の世界を知るからこそ、彼らの捨て身の献身ぶりに胸が痛む。

影に生きた名もなきスパイたちの生涯に、中国が誇る2大スターが光を当てる。どっしりと構えた重厚感あふれるトニー・レオン。伸びた背筋と、表情を消した陶器のような美しい顔から緊張感を漂わせるワン・イーボー。無情の世界が、2人の力で美しい作品へと昇華していく。