能登半島地震から8カ月…復旧・復興の現状や今後の備えを検証「遅れると人口流出深刻化も」

AI要約

8カ月前の能登半島地震からの復興状況を検証。

公費解体の遅れや人口流出の懸念。

津波への避難対策の重要性。

能登半島地震から8カ月…復旧・復興の現状や今後の備えを検証「遅れると人口流出深刻化も」

9月1日は防災の日、そして、元日に発生した能登半島地震から8カ月が経ちました。

復旧・復興の現状や今後の備えについて検証します。

発生から月日が経ち、色褪せた応急危険度判定を示す張り紙。

復旧・復興を加速させるには何が必要か…。

50年以上にわたり、国内外の災害現場を視察した防災のスペシャリストが見た被災地の「いま」は…。

氷見市の中心部、北大町。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「更地になると、何があったか思い出せない」

防災システム研究所所長の山村武彦さんがこの地を訪れるのは今年2月以来です。

地震で1階部分が崩れ、しばらくそのままとなっていた酒店。

いまは公費で解体され、更地となっています。

富山県内で最も被害の大きかった氷見市。

およそ800件が、公費解体の対象と想定されていますが、完了したのは50件余りにとどまっています。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「どう考えても遅い。熊本地震でも全部の公費解体が進むのは3年くらいかかっているが、最初の半年、1年はかなり大車輪でやれる。この時点での公費解体率は低い」

市は今後、解体のペースを加速させ、来年度末までの完了を目指しています。

山村さんは50年以上にわたり、国内外の被災地を訪れ、自治体や企業に提言を行ってきました。

その経験から、「どの被災地でも復旧・復興が遅れると人口流出が深刻化する」と指摘します。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「今の避難先の便がよかったり、暮らしやすかったりすると、戻る選択肢が減っていく。二次避難先に永住する人は過去の災害で多い」

*氷見市新道町内会 山崎勇人会長

「ここ一帯も公費で解体される」

北大町の隣にある栄町・新道地区。

町内会長を務める山崎勇人さんも人口の流出を懸念しています。

町内ではおよそ80世帯のうち、40世帯ほどが別の町内にある市営住宅や賃貸住宅などに二次避難し、なかには市外への移住を決めた人もいます。

*氷見市新道町内会 山崎勇人会長

「実際、数名の方は町内から出ていった。家を買ったとか。皆さん地面は持ったまま。子どもや孫が戻ってきてもらえたらいい。それまでに住めるような区画整理までできればいい」

*防災システム研究所 山村武彦所長

「コミュニティーが分散すると、再度まとまるのが大変」

*氷見市新道町内会 山崎勇人会長

「公営住宅は、地区の住民はなるべく同じ建物の中に入れてほしいと(市に)要望した」

氷見市は、来年度、市内2カ所で災害公営住宅の建設に着手し、再来年、2026年秋までの完成を目指しています。

今のところ、想定を上回る入居希望者がいることから3棟目の建設が検討されていますが、山村さんが重要と考えるのは計画を判断するスピードです。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「災害公営住宅は災害の度に作られるが、過去の事例だと希望していた人が変化して、公営住宅が余ってしまうケースも結構ある。人の心も状況も流動的。大事なのは自治体のスピード。復旧復興のスピード、計画のスピード、実行のスピード、判断のスピード、説明のスピード、スピードが問われる」

今回の地震で住宅被害と同様、大きくクローズアップされたのが津波からの避難です。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「日本海の津波は短時間で来る。地震の揺れから身を守ったらすぐに避難しないと間に合わない」

射水市沿岸部の港町。

この地区は津波の到達までに徒歩で安全な場所へ避難するのが難しい「避難困難地区」に指定されています。

唯一の避難場所は4階建ての市営住宅ですが、自治会長の佐竹さんは、元日の地震の際、この場所に避難した人はかなり少なかったといいます。

*射水市 古新町西部自治会 佐竹正会長

「町内では避難場所と広報していたが、みんな南の方に行った」

*防災システム研究所 山村武彦所長

「ハザードマップでは避難場所になっている」

その理由のひとつが市営住宅の階段。

高齢者や体が不自由な人が避難するには、「急で狭い」という難点がありました。

山村さんは、あらかじめ車で避難する人を決めるなど、独自の避難ルールの策定が急務だと話します。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「走って逃げられる人と、車でしか逃げられない人を分けて、車でしか逃げられない人はステッカーを貼って、車で優先的に逃げられるようにしていかないと、命はいくつあっても足りない」

*射水市 古新町西部自治会 佐竹正会長

「車を持たない交通弱者、80歳になっても車に乗っているが、いつまでも運転できるわけない」

*防災システム研究所 山村武彦所長

「乗合で避難するルール、誰が誰を乗せていくかのルール作り、『防災隣組』を作らないと進まない」

さらに、津波の威力を正しく理解することの重要性を強調します。

*防災システム研究所 山村武彦所長

「1メートルの津波に人間が巻き込まれると、死亡率100%と言われている。津波はただ水がやってくるだけではない。富山湾や港の中のヘドロを巻き込んで、漂流物と一緒に流れてくる。生コンが押し寄せるようなエネルギーを持った水」

山村さんは過去の災害では漂流物の流入を防ぐ、津波バリアが有効だったとしハード面の対策にも目を向けるよう指摘します。

いま、県内の各自治体で地震対応の検証が進んでいますが、対策を講じるスピードが問われています。