南房総の「渋谷」再生 廃校、複合施設に生まれ変わる カフェとラウンジ先行オープン

AI要約

南房総市の岩井海岸地区にある廃校を再生させるプロジェクト"SHIBUYA IWAI PARK"について紹介。

旧富山臨海学園の歴史や再生プロジェクトの経緯、施設の先行オープン情報。

将来的に宿泊施設や飲食店、リサイクルショップなどを展開し、さまざまな利用可能性がある"SHIBUYA IWAI PARK"の未来の展望。

南房総の「渋谷」再生 廃校、複合施設に生まれ変わる カフェとラウンジ先行オープン

 南房総市の岩井海岸地区にあり、廃校になった旧「東京都渋谷区立富山臨海学園」が、都市と地域を結ぶ複合施設として生まれ変わろうとしている。その名も「SHIBUYA IWAI PARK」。発起人は市原市出身の牧野圭太さん(39)。地元住民や企業、構想に賛同するサポーターなどさまざまな人たちと手を取り合って再生に挑む。7月20日、建物内にカフェスタンドとラウンジを先行オープンした。来年夏の全面開業を目指す。

 旧富山臨海学園は、岩井海岸のすぐ近くで、渋谷区が今も所有する施設。宿泊棟や食堂棟、教室棟、校庭などがあり、かつては都会の同区の子どもたちが宿泊して、海や自然と触れ合う「冒険教育」の場として使われた。2018年の利用を最後に廃校となっていた。

 牧野さんと旧富山臨海学園の出合いは21年夏。使われなくなった学園施設の前を偶然通りかかった。渋谷で暮らし「いつか千葉の仕事をしたい」と考えていた牧野さんは「(活用できる)ポテンシャルが絶対にある」とひと目見て確信。そんな中、同区が同学園の再生事業の事業者を公募し、牧野さんが共同代表を務めるデザイン会社「DE」が名乗りを上げて選ばれた。現在は同社の子会社「南房企画」=南房総市=が主体となって、再生プロジェクトを進めている。

 このプロジェクトは渋谷区から施設を借りて廃校を再生させる「民間」の取り組みで、自治体などからの支援はなく、多大な資金が必要になる。そこで、支援を募ろうとクラウドファンディングを開始。昨年11月末~今年1月末の2カ月間で、429人から1千万円以上の支援が集まった。

 この夏、カフェスタンドと、休憩できるラウンジが先行開業し、コーヒーやサイダー、ビール、ジェラートを注文できる。釣り具のレンタルなどもしていて、マリンアクティビティーの拠点としても利用できる。

 今後は宿泊棟をホテルに、食堂棟をレストランに改装し、教室棟では古本を用いたライブラリーや、渋谷で集めた余剰品を販売するリサイクルショップを展開する予定。チーズ工房や蒸留所を作る構想もある。

 観光地で過ごしながら働くワーケーションの拠点や、企業の合同合宿所などにも活用してもらいたいという。

 現在、渋谷と南房総市で二拠点生活をしている牧野さんは「都心から約80分でこんなに自然があふれる場所がある。渋谷はさまざまなものにあふれているけれど、本当の自然が少ない。一方で岩井海岸周辺は人や会社が減ってきているが、豊かな自然や時間がある。二つの場所を循環させてお互いの足りない部分を補えたら良い」と話す。

 目指すは大人も子どもも、年齢を問わず楽しめる公園のような施設。牧野さんは「岩井は海も近くて街並みも良い。その秘められた可能性を伝えたい。東京とは違った発展の仕方があるはず。それに貢献できる拠点にできたら」と考える。地域の大人たちも巻き込んだ新しい「冒険教育」の場に。本格開業に向け、準備を進める。