自民岐阜県連、県知事選擁立一本化へ難局再び 選対委、推薦候補選定きょう開始

AI要約
岐阜県知事選における自民党県連の推薦候補選定が始まり、前回の保守分裂選挙を反省しつつ候補者の選出に躍起になっている。現職の古田肇知事が不出馬を表明し、自民党参議院議員の渡辺猛之氏と元内閣府官房審議官の江崎禎英氏が推薦を求める中、内外で支持が割れる状況が続いている。推薦候補の決定や選挙の方針について議論が混迷する中、党内外での意見が対立しており、難しい判断を迫られている。
自民岐阜県連、県知事選擁立一本化へ難局再び 選対委、推薦候補選定きょう開始

 任期満了(来年2月5日)に伴う岐阜県知事選で、自民党県連は、選挙対策委員会の初会合を24日開き、推薦候補者の選定が始まる。2021年の前回知事選に続き再出馬を正式表明した元内閣府大臣官房審議官の江崎禎英(よしひで)氏(59)と出馬に意欲を示す県選出の自民党参議院議員渡辺猛之氏(56)の2人が推薦を求める見通しだが、現時点では県議らの間で支持が割れている。1966年以来55年ぶりの保守分裂選挙となった前回の反省を踏まえ、県連は「今回は自民(の支持)を割らない」(幹部)を大原則に据えており、県連内の駆け引きが続きそうだ。

 「これじゃ前回と同じ構図じゃないか」。10日、渡辺氏が出馬する意向を固めたとする新聞記事を見て県連幹部の県議は声を荒らげた。「今回は県連としても県議会の会派としても支持も割らない、しこりも残さない、はずだったのにこれでは…」と言葉を失った。

 渡辺氏は前回知事選で5選した現職の古田肇知事(76)の選挙を中心的に支えた一人で、早くから現職の後継として名前が挙がっていた。当の本人は態度を曖昧にしてきたが、今月8日に古田知事が定例記者会見で突如、不出馬を表明すると、即座に動き出す。近い県議に「腹は決まった」などと次期知事選への出馬意欲を伝達。21日には県農政連から、22日には市長21人と町村長19人から次期知事選への出馬要請を受けて、現職の正式な後継としての立場を印象づけた。

 一方、江崎氏は昨年11月に出馬の意向を表明していたが、21日に正式な出馬表明会見を開いた。前回敗戦してから県内各地を小まめに回り、講演会や街頭活動を繰り返してきた。政局から一定の距離を置き、自身の政策提示や知名度向上のための活動を続ける。会見では、自民をはじめ野党の県連にも推薦を求める考えを明らかにし、仮に自民の推薦が得られなかった場合でも「120%出馬する」と不退転の構えを見せた。ベテラン県議の一人は「政策通な部分も含め、知事選まで半年となったタイミングで改めて存在を知らしめた」とこの時期での正式表明を評価する。

 今後は、選対委員会による推薦候補の絞り込み方法が焦点となる。自民党の国会議員や県議ら関係者の間では、「公募」という形で立候補予定者の推薦願の提出を募る方針では一致している。24日の選対委の初会合では受付期間などについて具体化するとみられる。

 渡辺氏は県議選初当選以降、30年にわたって自民党に所属。党への貢献度を考慮すると、推薦を得やすい立場だ。県内の大半の首長から出馬要請を受け、渡辺氏に近い県議は「普通に考えれば渡辺氏でまとまっていいはず」と話す。

 ただ、22年夏の参院選で3選し、3年半の任期を残した状態で知事選に“くら替え”することには県連内でも懸念の声が強い。知事選出馬のために参院議員を自動失職すれば、後任を決めるための参院補選が来年4月に行われる予定。その数カ月後の来年夏には参院選が控えており、岐阜選挙区選出の大野泰正参院議員(65)が党派閥の政治資金パーティー裏金事件で自民党を離党したため、党本部からは新たな公認候補の擁立を迫られている。県議の一人は「自民の信頼回復が道半ばなのに、わずか半年の間に全県一区の選挙を3回行うのは現実的ではない」と分析。渡辺氏への推薦を見送ることで事態回避を狙う動きもある。

 前回知事選で現職を推した県選出国会議員の一部からは推薦候補を決めるための党員投票を求める声も挙がるが、「その時点で保守分裂になる」(県議)と反対の声は根強い。一本化に向けた議論が混迷するのは必至で、選対委は難しい対応を迫られている。