鹿児島県 奄美大島のハブ毒解説 「血清だけでは治らない」 研究40年 服部正策さん講演会

AI要約

奄美市住用町の奄美大島世界遺産センターで行われた服部正策さんの講演会を開催し、森やハブについての貴重な知見を共有した。

服部さんは奄美大島のハブの特徴や毒の分析方法について詳細に説明し、毒に関する誤解も解消した。

参加者からは、自然との共生やハブの危険性について深く考えさせられた声が上がった。

鹿児島県 奄美大島のハブ毒解説 「血清だけでは治らない」 研究40年 服部正策さん講演会

 開館2周年を迎えた奄美市住用町の奄美大島世界遺産センターで26日夜、東京大学医科学研究所(瀬戸内町手安)でハブ研究に40年間携わった農学博士の服部正策さん(71)の講演会があった。展示室に特設された会場には約80人が来場し、「雨の日以外は森にいた」という服部さんの話に耳を傾けた。講演後は、里朋樹さん(34)、森永あすかさん(27)によるシマ唄ライブで記念日を祝った。

 2022年7月26日の開館から丸2年となる記念イベント。冒頭、同センター管理運営協議会会長の安田壮平奄美市長が「03年に候補となり登録まで18年を要した。これは出発点。自然の魅力を活用した地域づくりに取り組み、発信を続けていく」と3年目の抱負を述べた。

 講演は、同協議会事務局長の岡翔太さん(38)が司会を務め、トーク形式で行われた。

 東京大学在学8年目に教授から奄美行きを打診されたという服部さん。1980年、瀬戸内町にある同大医科学研究所奄美病害動物研究施設に着任し、ハブの研究を通して知り合いが増えたと振り返った。

 服部さんは「奄美大島のハブが一番きれい。模様がはっきりしていて大島紬のデザインとなったのがうなずける」と話し、「毒の分析は徳之島のハブがやりやすい」と続けた。

 奄美大島のハブには出血毒に加え筋壊死(えし)性の毒が含まれるのが特徴で、沖縄、徳之島と異なり「ハブ馬抗毒素(血清)」のみでは筋肉が壊死してしまうという。そのため、治療には傷口を切り洗浄、毒素を物理的に減らした上で処置することが重要だという。

 「〝口で吸い出して歯が抜けた〟という話も当たってないと思う。ハブの毒は粘膜や皮膚には作用しない。歯槽膿漏(しそうのうろう)だったのだろう」と笑いを誘う場面も見られた。

 人と自然との関わり方については、「奄美の生きものはほとんどが固有種。これが島の面白さだが、〝守ろう、守ろう〟と堅苦しく考える必要はない。昔と同じように森に入り糧(かて)を得て、自然とともに生きていけばいい」と語った。

 5月の農作業中にハブにかまれ、10日間の入院生活を余儀なくされたという瀬戸内町の広野裕介さん(38)は「興味のある内容ばかりだった。毒の構成成分に違いがあることなど深く知ることができた」と話し、「2度とかまれたくない」と苦笑した。