部活動や授業 学校での運動中の事故、どう対応したらいい? 頭部外傷・落雷・熱中症

AI要約

運動中の事故が相次ぎ、特に頭部外傷や落雷、熱中症について専門家が対処法を指南

日本スポーツ振興センターのデータによると、学校での運動中の事故で亡くなったり障害を負った子供が多い

頭部外傷の症状や検査、落雷時の対処法、AEDの活用などについて注意が喚起されている

部活動や授業 学校での運動中の事故、どう対応したらいい? 頭部外傷・落雷・熱中症

 部活動や体育の授業など学校での運動中の事故が相次いでいます。熱中症や骨折、頭のけが、落雷…。中には、命に関わる重大な事故も繰り返されています。今回は、リスクの大きい頭部外傷、落雷、熱中症への対処法を専門家に聞きました。

 日本スポーツ振興センターが公開している学校事故データベースによる死亡見舞金と障害見舞金の給付事例では、2022年までの10年間で運動中に亡くなった児童生徒は150人、障害を負った子どもは2145人に上っている。

 子どもの頭のけがで多く、注意したいのは「急性硬膜外血腫」だ。頭部に強い力が加わることで頭蓋骨の骨折などが生じ、頭蓋骨と硬膜の間に血液がたまるもの。広島大病院(広島市南区)脳神経外科の堀江信貴教授は「本人はしっかりしていても、急変することがある」と注意を呼びかける。

 もしも、試合や練習中に頭の接触があった場合、すぐにフィールドの外などに出して状態を確認する。手足のまひ、けいれん、頭痛、嘔吐(おうと)、意識障害などの症状がある際にはすぐに救急車を呼ぶ。これらの症状がなくても、医療機関を受診して検査するといい。

 検査は頭部CTで行う。しかし、微細な出血はすぐに分からないこともある。所見に異常がなく「経過観察」となってもその後出血が増え、意識障害に陥ることがある。堀江教授は「本人を1人にせず、異変に気付けるよう普段の様子を知る人が見守っておくことが必要」と強調する。受診後、数時間は観察に努めてほしいとしている。

 夏、かんかん照りの空が一転して暗くなり、雷雨に見舞われる―。そんな経験をした人もいるだろう。瀬戸内沿岸部では、雷が6~8月に発生しやすく、広島市中区では過去3年間、最も多いのが7月という。特に午後から夕方に起きやすく、注意が必要だ。

 「晴れていても、周りに背が高くて下の方が黒い雲ができたら要注意」と警鐘を鳴らすのは、広島工業大(佐伯区)の地域防災減災教育研究推進センターの田中健路センター長だ。「急に冷たい風が吹き始めたら雷雨のサイン。早めに屋内に避難してください」と呼び掛ける。

 雷は高い物に落ちやすい。電柱や樹木のそばも危険で、木に落ちた雷が人に飛んでくる「側撃」を受けることも。電柱や木から4メートル以上離れ、てっぺんを45度以上の角度で見上げる場所で姿勢を低くする。グラウンドなどの開けた場所では、頭を低くしてしゃがむ。

 一般的に、光と雷鳴の間隔が長ければ安全と言われるが「これは間違い」と田中センター長。雷雲は時速40キロ以上で動いており、例えば3キロ先で雷が鳴ったとしても数分で近づく。また「雨足が弱まったとしても、次の雨雲が来る場合もある。部活動の指導者は油断せず、子どもたちを安全な場所に待機させて」と促している。

 落雷にあった場合の対処について救急科専門医で広島国際大救急救命学科(広島県東広島市)の津村龍教授は「心肺停止でも心臓が動けば助かる可能性がある」として、自動体外式除細動器(AED)の使用を薦めている。