被告の責任能力認める・みちのく病院殺人

AI要約

八戸市の「みちのく記念病院」で昨年3月、同じ病室に入院していた男性を殺害した58歳の被告に懲役17年の判決が言い渡された。

裁判では被告の責任能力が問題になり、非社会性パーソナリティー障害の有無が焦点となった。

被告は入院生活に我慢できず、退院するため男性を殺害。判決後、弁護人は控訴の可能性を示唆した。

 八戸市の「みちのく記念病院」で昨年3月、同じ病室に入院していた男性=当時(73)=を殺害したとして、殺人罪に問われた本籍五戸町、住所不定、無職男の被告(58)の裁判員裁判で、青森地裁(藏本匡成裁判長)は1日、被告の責任能力を認め「動機は身勝手かつ自己中心的」として、懲役17年(求刑懲役18年)の判決を言い渡した。

 公判の争点は責任能力の有無や程度。被告の「非社会性パーソナリティー障害」が、責任能力に影響したかが焦点となった。

 藏本裁判長は、非社会性パーソナリティー障害が動機形成に大きく影響した一方、善悪を判断したり、犯行を思いとどまることはできた-とし「完全責任能力の状態にあった」と認定。心神喪失だったとする弁護側の主張を退けた。

 被告は入院生活に耐えられず、殺人を犯せば退院できると考え、偶然隣のベッドに寝ていた男性を殺害しており「何ら落ち度のない被害者の生命を奪った結果は取り返しがつかない」と非難。看護師から両手をベッドの柵に縛られて寝ていた男性は、身を守ることもできず「理由も分からないまま、耐えがたい苦痛の中で命を失った」とし、「無念さは察するに余りある」と述べた。

 被告の軽度認知障害や非社会性パーソナリティー障害については「有利な事情として考慮する程度には限界がある」と判断した。

 被告は開廷の3分前、車椅子に乗せられて入廷。判決は、証言台の前で法壇を真っすぐ向いたまま聞いた。量刑理由の後、藏本裁判長が「最後にもう一度、主文を確認しておきます。懲役17年、そういう結論です」と述べると、被告は「はい」と返事をし、うなずいた。

 判決などによると、被告は昨年3月12日午後10時45分ごろから同11時45分ごろまでの間、同病院の病室で、隣のベッドに寝ていた男性の体に乗り両手で首を押さえつけ、左目付近に歯ブラシの柄を突き刺すなどし、翌13日に頭蓋内損傷・失血で死亡させた。

 閉廷後、被告の弁護人は取材に、控訴は「被告の意思を確認した上で決める」と述べるにとどめた。