亡き先輩の青春をラジオ番組に エクセラン高放送部の伊藤望さん 長野県松本市

AI要約

19年前に急死した先輩が遺したものを受け継ぎ、全国の舞台に進出するエクセラン高校の放送部部長・伊藤望さん。彼が先輩との絆を繋ぎ、NHK杯全国高校放送コンテストでの活躍が描かれている。

伊藤さんは先輩の詩からインスピレーションを得て、先輩の生涯や周囲の思いを紐解く取材を行い、素晴らしい作品を制作した。

取材を通して、伊藤さんは先輩からの教訓を受け継ぎ、認め合う関係の大切さを次世代に伝える使命感を抱いている。

亡き先輩の青春をラジオ番組に エクセラン高放送部の伊藤望さん 長野県松本市

 19年前に急死した当時2年生の先輩が遺したものを受け止め、全国の舞台へ―。エクセラン高校(長野県松本市)の放送部部長・伊藤望さん(18)=普通科3年生=は、第71回NHK杯全国高校放送コンテスト県大会のラジオドキュメント部門で最優秀賞の「NHK長野賞」を受けた。生前の先輩を知る関係者に丁寧に取材を重ね、教諭や友人らとの絆をまとめた作品「風力0(ゼロ)で」で、同部門2年連続で7月の全国大会へ進む。

 伊藤さんは昨冬、図書館で遺族の寄付金で設けられた先輩の名を冠する文庫を見つけた。人文字で同じ名を記した平成17(2005)年度卒業生の絵皿も飾られていたことに興味を持ち、取材を始めた。

 同年の卒業アルバムには学校が好きだったという先輩の詩「風」が載り、「風力0で学校へ向かう」との一文が目に留まった。自身は小中学校で不登校を経験し、抵抗なく通学する様子に「なぜ、そんなに学校へ行きたかったのか」との問いを持ち、制作を進めた。

 先輩が亡くなったのは高校2年生の1月。深夜の急性心不全だった。7分間の作品では、当時を知る教員や同級生の証言をつなげ、先輩が誰に対しても明るく優しく接し、周囲も体が弱かった先輩を自然と支えたという「認め合える関係性」を浮かび上がらせた。

 特に先輩が慕っていた担任の吉見繁憲教諭(51)については、インタビューで亡くなった日の帰り際に強い言葉で進路指導をしたことを悔やみ、生徒と別れるときに常に笑顔を心掛けるようになったことを紹介。「大切なものを受け取った」と表現した。

 伊藤さんは取材を通して先輩の生き方に学んだといい、「周りに認めてもらう前に相手を認めていたからこそ、先生や友人と特別な関係が築けたのだと思う。認め合う大切さを現代の高校生に伝えたい」と力を込める。吉見教諭は「まだ寂しい気持ちもあるけれど、作品にしてもらい、皆の中で生きていると感じられる」と話していた。

 伊藤さんはアナウンス部門でも全国大会へ進むほか、同校からは朗読部門で2年生・内村美友さんも出場する。