「老齢の歌」にエール 講師に三枝浩樹さん迎え 第20回南信州短歌大会【長野県飯田市】

AI要約

南信州新聞社主催の「第20回南信州短歌大会」が16日、長野県飯田市東栄町の飯田市勤労者福祉センターで開かれた。飯田下伊那地域を中心に短歌愛好者ら約70人が参加。講師に歌人の三枝浩樹さんを迎え、講演と投稿歌の講評を聴いた。

大会では「歌のあじわい その魅力を求めて」と題して講演。歌人の上田三四二さんと橋本喜典さんの歌をそれぞれ8首ずつ挙げて詠み、解釈と味わいを述べながら歌の魅力を説いた。

今回は特選に下平曜子さん、原美代子さん、安藤千穂子さんの3人、入選には10人が選ばれた。代表して安藤さんがあいさつに立ち「思いがけなく賞を頂けてうれしい。いつまで歌をつくっていけるか分からないが、大きな励みになった」と謝辞を述べた。

「老齢の歌」にエール  講師に三枝浩樹さん迎え  第20回南信州短歌大会【長野県飯田市】

 南信州新聞社主催の「第20回南信州短歌大会」が16日、長野県飯田市東栄町の飯田市勤労者福祉センターで開かれた。飯田下伊那地域を中心に短歌愛好者ら約70人が参加。講師に歌人の三枝浩樹さんを迎え、講演と投稿歌の講評を聴いた。

 本紙創刊50周年記念事業の一つとして2004年から開催。短歌愛好者の研さんと地域における短歌文化の発展を目指している。3月から作品募集したところ、本紙「読者文芸」欄の短歌投稿者や、本社主催「南信州短歌教室」の受講生らを中心に多世代から98首が寄せられた。

 講師の三枝さんは1946年、山梨県甲府市生まれ。高校時代、歌誌「沃野」で植松寿樹に師事。「反措定」「かりん」を経て「りとむ」創刊に参加、現在「沃野」代表。短歌研究賞(2016年)、若山牧水賞(17年)、迢空賞(18年)などを受賞している。

 大会では「歌のあじわい その魅力を求めて」と題して講演。歌人の上田三四二さんと橋本喜典さんの歌をそれぞれ8首ずつ挙げて詠み、解釈と味わいを述べながら歌の魅力を説いた。

 医者でもあった上田さんについて三枝さんは、「死と生の問題をわが身を通して表現した歌人」とした。一方の橋本さんの歌については「分かりやすい」とした上で、「自分の感じたこと、思ったこと、見たことを率直に実感として伝える歌づくりを守った人」と評した。

 三枝さんは意味深い二人の歌に解釈を加えながら「(誰かの)歌が好きだと思ったら歌集単位でよむといい。歌集一冊で全体が見えてくる」と述べ、歌集に親しむことを勧めた。

 続いて出席者の投稿歌を講評。一首ずつ取り上げながら、それぞれの歌から得る感想を語り、作歌上の技巧的なアドバイスや添削を施した。

 上句と下句の表現では歌全体のリズムを調合することが大切。特に助詞の入れ方でリズムが生きる。「実感を伝えるときには、うれしいとか悲しいとかそれぞれの感情があるが、リズムは言葉の組み合わせであるとともに、心のリズムの組み合わせでもある」と、リズムを意識することの大切さを強調した。

 参加者の多くは高齢者で、長寿や老夫婦をテーマにした投稿歌も目立った。プラス志向のそれらの歌を、三枝さんは「いい歌」として評価し、共感の思いを述べた。昔は病死や老齢を生きるのが大変、といった歌が多かったが今は人生100歳代の時代。「この年齢まで生きているのは悪くない。かつてなかった老齢をうたう歌を、たくさん詠んでほしい」とエールを送った。

 今回は特選に下平曜子さん、原美代子さん、安藤千穂子さんの3人、入選には10人が選ばれた。代表して安藤さんがあいさつに立ち「思いがけなく賞を頂けてうれしい。いつまで歌をつくっていけるか分からないが、大きな励みになった」と謝辞を述べた。

 特選者と作品、入選者は次の皆さん。

◇特選

玉音の意味を知らぬと若者に問わるる令和遠のく昭和

下平曜子

飯田弁に友を呼び合う声がする過ぎて還らぬ日のやさしさに

原美代子

萎えきたる身に埋み火のわずか見ゆ今しばし生きうたを紡がむ

安藤千穂子

◇入選

佐々木桂子、鋤柄郁夫、北村とよ子、中村さよ、曽我都男、宮内義宏、田畑玲奈、木内かず子、木林睦枝、伊東美佐子