相次ぐ半導体企業の進出『熊本の地下水は守られるか?』最新データもとに考える

AI要約

熊本地域の水循環シミュレーションシステムによる地下水の流れと、嶋田純名誉教授の話による地下水の構造について

大津町や菊陽町で行われている水張り事業と、半導体企業の地下水使用計画について

おおきく土地改良区や農家との協力による水張り事業の成果と、今後の地下水保護の展望

相次ぐ半導体企業の進出『熊本の地下水は守られるか?』最新データもとに考える

半導体企業の進出に伴い地下水が減少することを防ごうと、大津町や菊陽町などの農地に水を張って、地下に浸透させる事業が進んでいます。将来的に熊本の地下水は守られるのか?最新のデータをもとに考えます。

最先端の水循環シミュレーションシステムで表された熊本地域の水の流れです。青い点が川や湖などの「地表水」、赤い点が「地下水」です。赤の地下水が、白川中流域から熊本市側に集まっていることがわかります。

断面図を見ると、上流、中流部で浸透した雨水が、地下水となって江津湖付近で湧き出しています。

水の循環を専門に研究する熊本大学の嶋田純名誉教授は、熊本地域の地下には水をためやすい構造があると話します。

■嶋田純 熊本大学名誉教授

「阿蘇の火砕流の堆積物が、地下水の帯水層という入れ物をつくっている。火砕流は非常に粗い粒子のものですから、間隙が大きいので水を蓄えやすい」

大津町や菊陽町の白川中流域では、この20年間、毎年5月に農地への水張り事業が始まります。多くの地下水を使用する半導体工場の誘致が加速する中で、水を人工的に地下へ浸透させる取り組みが注目されています。これを可能にするのが、「ざる田」と呼ばれてきたこの地域の農地が持つ「地下水かん養能力」です。

水張り事業に取り組む「おおきく土地改良区」と農家の協力で、農地に水が浸透する様子を見せてもらいました。午前9時の段階で約5センチたまっていた水は、午後6時までの9時間で地面が見えるまで減少しました。この辺りは、平均的な農地の5倍から10倍の水が浸透するということです。

■農家

「ここを30センチぐらい掘ったら砂地なんですよ。麦刈りの後に水を入れても、なかなかたまらないです。吸い込んで」

菊陽町に進出したTSMCは、1日に8500トン、1年間で310万トンの地下水をくみ上げる計画を公表しています。水張り事業で地下水の減少は防げるのでしょうか。おおきく土地改良区では、地下に浸透する水の量を1日に11センチとして、水張りで蓄えられる地下水量を試算しています。

今年度、水張りに参加する農家が農家が大幅に増え、夏場の水張りは800万トン以上増加する見込みです。さらに今年度から新たに11月から翌年2月までの冬場の水張りが始まり、300万トン以上の水が蓄えられる見通しです。