部活動に「まちづくり」視点 異世代、多種目…「仕組み」検討 26年度移行目指す静岡・川根本町

AI要約

静岡県内の公立中学校で部活動の地域移行が進められていることが分かった。川根本町では学校部活動を廃止し、地域団体に委ねる方針を示しており、持続可能な活動を目指している。

地域移行の会合では、町教委が地域移行の方向性を示し、保護者らも意見を出し合っている。新たな仕組みに期待が寄せられており、将来はさまざまな形態の活動が展開されることが期待されている。

10市町で休日移行の目標時期や方法が定められており、それぞれ地域事情に合わせた取り組みが進められている。静岡市や沼津市、牧之原市などが具体的な計画を持ち、地域との連携を重視している。

部活動に「まちづくり」視点 異世代、多種目…「仕組み」検討 26年度移行目指す静岡・川根本町

 静岡新聞社が県内全市町を対象に実施した公立中学校の部活動の地域移行に関するアンケートで、早い自治体では2025年度から休日に教員が担っていた学校部活動を地域団体などに移行することが分かった。川根本町教育委員会は26年度に学校部活動を廃止し、平日を含めて地域クラブへ委ねる方針を打ち出している。少子高齢化が深刻さを増す中で「まちづくり」の視点を取り入れながら持続可能な活動を目指している。

 「中学生に限らず、老若男女がスポーツや文化活動に親しめる町独自の仕組みを考えたい」。5月下旬、同町で開かれた地域移行についての会合で、町教委教育総務課の守谷洋紀さん(47)が地域移行の方向性を保護者らに示した。

 人口約5800人、高齢化率は51%を超える同町。本年度に小中学校4校を再編して9年制の義務教育学校2校が誕生した。部活動は任意制であるものの大半の生徒が加入し、昨年度は再編前の中川根中の5部活、本川根中の4部活に計92人が所属。しかし町の予測では33年度に加入者数は半減し、団体種目は成り立たなくなる。「さまざまな『持続可能性』を考えると、スピード感を持って取り組まなければいけない」と守谷さん。既に競技性や専門性を求める子は学校外のクラブチームなどに所属しているとして、生涯学習としての活動を広げたい考えを説明した。

 会合では「今ある部活動をそのまま指導員に任せる」「個人種目を残し、その他は季節ごとに活動を変える『総合型クラブ』にする」-などのパターンが提示され、保護者らが意見を出し合った。小学6年の娘と部活動について話す機会が増えているという母親(52)は「(娘は)現状では入りたい部活がないと言っていたが、地域移行すれば選択肢が広がりそう」と期待する。「総合型クラブ」に魅力を感じたという小学5年の息子を持つ母親(36)は「結果を求めて一つのことに打ち込むのではなく、関心や興味に従って地域の人と取り組むのもいい」と話した。

 一方で地域移行後の送迎などへの不安も大きい。道路事情により学校まで車で30~40分かかる生徒もいて、「これまでも送り迎えが必要なら部活動はできない、という認識」との声も。これに対し「さまざまな年代が参加する活動になれば、乗り合わせることも可能では」との意見もあった。

 今後、3、4カ月に1回同様の会合を開くほか、有識者による「検討会」も開催し、具体化していく。守谷さんは「不安があると思うが、意見交換によって納得できることもある。町全体の理解を深めていきたい」と話した。

 ■休日移行 静岡県内10市町が目標時期設定

 休日について移行の目標時期や具体的な方法を定めているのは8市2町。それぞれ地域事情に合わせて実証実験を行いながら態勢整備を進めている。

 静岡市は、市内を15エリアに分けてエリア内の中学生が合同で取り組んだり、特色ある活動に打ち込んだりする「シズカツ」を展開する方針で、本年度運営方法や利用者負担などを決定する。沼津市は本格的に競技に取り組む「競技志向」とさまざまな種目を選択できる「生涯志向」の2区分を設ける予定。

 牧之原市は2026年度から、現在の部活動を希望する教員による指導▽部活動指導員による指導▽活動しない-の三つに分け、地域との連携を図る。