運慶・快慶だけじゃない! 人々の祈りを形にし、時代を駆け抜けた仏師たち―山本 勉『鎌倉時代仏師列伝: 慶派・円派・院派』

AI要約

運慶派、快慶派、院派、円派、善派、信濃や東国の仏師に焦点を当てた鎌倉時代の仏師たちの事績と作風を解説。

運慶と快慶を中心に仏師たちの背景や作品、信仰との関わりを探る。政治的背景や社会的地位も考察。

著者は新聞記者の棚井里子。2023年刊行の『鎌倉時代仏師列伝』が紹介されている。

運慶・快慶だけじゃない! 人々の祈りを形にし、時代を駆け抜けた仏師たち―山本 勉『鎌倉時代仏師列伝: 慶派・円派・院派』

◆仏師たちの事績や作風を流派から探る

南都焼討で焼失した寺院の復興、為政者たちの祈りを造形すべく、京都や奈良、鎌倉、地方で腕をふるった鎌倉時代の仏師(ぶっし)たちの事績と作風の特徴を図版と共に解説する。運慶(うんけい)派、快慶(かいけい)派、院(いん)派、円(えん)派に加え、善(ぜん)派と呼ばれるグループ、さらに信濃や東国の地方仏師の39人を取り上げる。

平安後期の定朝(じょうちょう)の系統から院派、円派、奈良仏師の三系統に分かれ、このうち奈良仏師から運慶派、快慶派が派生する。

第一章「運慶派」で紹介する一人目は「鎌倉彫刻の父」と位置づける康慶(こうけい)。朝廷からも鎌倉幕府からも重きを置かれ、子・運慶の「王道を準備」し、多くの仏師を育てた。そして運慶は京都・円成寺大日如来像に始まり、初期の東国鎌倉での造像で「迫力ある作風に鎌倉彫刻の新様式」を明確に示した。興福寺や東大寺など南都復興に果たした事績が輝かしい。

運慶と共に鎌倉時代を代表する快慶は、重源(ちょうげん)を師とする敬虔な浄土教信仰者であり「仏像作家と信仰者の二面性が」その性格を特徴づける。重源に重用され東大寺再興造像で活躍する。仏教者との関わりで造立に携わることも多いが、後半生には宮廷貴顕(きけん)や大寺の大規模造像に携わり「信仰者としての性格が薄れ」るなど、信仰の面からの読み解きは興味深い。

仏師たちの優れた技量や作風だけでなく、天皇や摂関家、幕府との関わり、僧綱(そうごう)位の地位が称号となって仏師の社会的地位を押し上げたかなど、政治的な動きもみながら、時代を駆け抜けた個性溢れる仏師たちの姿を描く。

[書き手] 棚井里子(新聞記者)

[書籍情報]『鎌倉時代仏師列伝: 慶派・円派・院派』

著者:山本 勉 / 出版社:吉川弘文館 / 発売日:2023年11月29日 / ISBN:4642084363

仏教タイムス 2024年2年15日掲載