「エシカル就活」いまどきの学生に広がるワケ 安定よりも、価値観が合う会社を

AI要約

エシカル就活とは、社会課題に取り組む企業を選んで就職活動をする新しい動きで、学生の関心も高まっている。

エシカル就活支援サービス「BaseMe」が紹介され、学生と企業をつなぐプラットフォームとして活用されている。

学生の事例を通して、エシカル就活のメリットやこれからの動向が示唆されている。

「エシカル就活」いまどきの学生に広がるワケ 安定よりも、価値観が合う会社を

現在の就活スタイルは、保護者の時代とは大きく変わり、アプリを使ったり、採用面接をオンラインで受けられたりと新しい形を取り入れています。学生の志向も同様で、大企業だけではなく、不安定でも可能性を感じられるスタートアップを選ぶことも珍しくなくなりました。そんななか、増えているのが、社会課題に対する企業の姿勢、理念やビジョン、自分の価値観と合うかどうかを重視して就職先を選ぶ「エシカル就活」の動きです。そのための就活サービスも生まれています。

気候変動、貧困、ジェンダー平等などの社会課題が注目されるなか、仕事で社会課題の解決をしたいと考える人が増えています。社会課題の解決や環境問題に取り組んでいる企業を選んで就職活動をすることを「エシカル就活」と呼ぶようになりました。エシカル(ethical)とは、「倫理的・道徳的」を意味する英語です。就職情報会社「学情」が2025 年 3 月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に行ったアンケート調査では、「仕事選びにおいて、社会課題の解決に貢献できるかを意識しますか?」という設問に対して、「意識する」「どちらかと言えば意識する」と回答した学生が7割を超えました(有効回答数551件)。

こうした社会課題への関心の高まりを受けて、社会課題をはじめ、自分のやりたいことを軸に学生と企業とをつなぐサービスが出てきています。その一つが「BaseMe」というプラットフォームです。学生はアプリをダウンロードし、関心を持っている社会課題や研究テーマ、インターンシップ、留学の経験などを書いてポートフォリオを作成し、データをアプリに登録します。企業はそのデータを見てインターンシップの案内を送ったり、スカウトしたりすることができます。現在までの2年間に累計約1万5千人の学生が登録し、約120社の企業が利用しています。

一方、学生はどんな社会課題に関心を持っているのでしょうか。前述の学情の調査によると、仕事を通して解決したい課題は、「身近な課題」「どちらかと言えば身近な課題」と回答した学生が約6割でした。「地球規模の課題」「どちらかと言えば地球規模の課題」は2割強で、「BaseMe」のユーザーでも、まちづくりや気候変動などに関心を持つ学生が多いといいます。一方で、企業側が求めているのは、ものづくり、医療・ヘルスケア、営業、技術などの分野が多いそうです。

東京都の多摩大学に通う城田空(そら)さん(4年)は、まちづくりに興味を持っています。東日本大震災で被害を受けた福島県いわき市の出身で、被災した高校生がアメリカでまちづくりを勉強するプロジェクトに参加したことがきっかけでした。

自分も何かできないかと思い、全国各地でまちづくりに取り組むグループをつなげる学生団体「クリネクション」の活動を、高校生のときから続けています。活動についてSNSで発信していたところ、23年夏に「エシカル就活」(現在のBaseMe)から連絡があり、誘われて登録しました。

自身のポートフォリオには、この団体の活動のほか、大学のゼミが企業と連携して取り組んだプロジェクトのことも書きました。登録後まもなく大手人材会社からインターンシップの案内が届き、ビジネスプランを提案する4日間のプログラムに参加。2カ月後、会社から連絡があり、面接などを経て12月に内定をもらいました。25年4月に入社したら、当面は人材関係の仕事で力をつけ、将来はまちづくりにも関わりたいと考えています。

「アプリに登録したところ、8社くらいからインターンシップの知らせをもらいました。自分に興味を持ってくれた理由がしっかりと書かれていて、企業が求めているものがわかるので、コミュニケーションがとりやすかったですね。僕にとっていちばんよかったのは、所属大学の偏差値ランクに関係なく、僕がやってきた活動や力を見てもらえたことです」(城田さん)

従来の就活は、学生が会社の説明会にエントリーして、筆記試験、面接と進んでいきますが、このアプリは企業からの申し出に対して、学生側が企業を選びます。

「就活の手間は自分に合った企業を探すことなので、企業から『あなたに合っていると思いますよ』と、理由も付けて連絡をくれるところがいいと思います」(城田さん)