かつては散髪のため韓国へ渡っていた?「対馬」の少し不思議なヒストリー伝統とモダンが交差する活気溢れる島へ

AI要約

友人が福江島に移住したことから対馬へ訪れた旅。デザインホテル「hotel jin」の魅力や対馬の魅力を堪能。

対馬の旅で訪れた酒蔵や醤油醸造所で地元のお酒や調味料を体験。白嶽酒造やつしま総本舗などを訪れる。

対馬の魅力を存分に楽しんだ旅で、友人や地元の方々との“不思議な縁”を感じた。

かつては散髪のため韓国へ渡っていた?「対馬」の少し不思議なヒストリー伝統とモダンが交差する活気溢れる島へ

 旅には“不思議な縁”というものがあるなぁ、とつくづく思った今回の対馬の旅。

 そもそも対馬へ行こうかなと思ったきっかけは、友人が同じ長崎県の福江島に移住したから。

 肝心な友人とはすれ違って会えなかったけれど、ひょんなことから知ったデザインホテル「hotel sou」の桑田隆介さんが故郷の対馬に宿をオープンするとのこと。かねがね“国境の島”を見てみたいという思いがあり、この機会に訪れてみたのでした。

 桑田さんのデザインホテル「hotel jin(ホテル ジン)」は、対馬の中心地・厳原(いづはら)のメインストリートにデンと構えていました。黒い瓦屋根に白壁の、明治元年に建てられた2階建て。かつては「有明荘」という名の旅館だったそう。

 その築155年の古民家を、人気建築家の長坂常(スキーマ建築計画)氏がリノベーション。そのスペースの斬新さには、もうびっくりです。

 全2室あるのですが、1階はほぼ何もない空白のスペース。その1階中央に、東西に分かれて階段が配置されています。通常、2階建ての旅館なら階段は1カ所で客室は並んだ造り。この建物では、客室につながる階段が異なり、客室の間は吹き抜け。隣の部屋にダイレクトには行けない造りになっています。ちょっとしたカラクリ屋敷のようです。

 それぞれの客室は二間からなる間取り。どちらも畳敷きで、カラダを包む重めのフトンが用意されています。室内にテレビはあえて置かず、1980年代のカセットテープ(山下達郎とサザンオールスターズ)とプレイヤーをセット。

 広いバスルームには、それこそ両手両足を広げられるほど巨大なバスタブが置かれています(お湯をためるには時間がかかるかも⁉)。バスアメニティは自然派の「SOMALI」、肌触りのいいタオルやパジャマなど、ディテールにおもてなしの心が感じられます。

 対馬ではhotel jinを滞在拠点とし、食事はもっぱらホテル裏手の川端通り界隈へ。桑田さん絶賛の居酒屋「お多幸」を訪ねてみると、満席状態。ガイドブックに紹介されているわけでもないのに島の常連さん、韓国からの観光客、ビジネス客、ごちゃ混ぜの状態です。

 評判のひと口カツや上海焼きそばをつまみながら、対馬の焼酎「やまねこ」をぐびり、ぐびり。飲みやすくて、お酒が進んでしまいます。

 実はこの「やまねこ」の蔵元である「白嶽酒造」へは、その日訪ねていたのだけれど、営業時間外だったために翌日、出直すことにしていました。すると、お多幸で囲炉裏を挟んで向かいに座っていた御仁が白嶽酒造の関係者だというじゃないですか。翌日の見学の約束をして、こちらも関係があるという醤油醸造所ともつないでもらいました。

 白嶽酒造では専務取締役にして杜氏の伊藤真太郎さんが、大きなタンクが連なる蔵内を案内してくれました。創業1919年の白嶽酒造は対馬唯一の造り酒屋。対馬は島の面積のほぼ9割を占める森林により水資源が豊富。地下20メートルから汲み上げた水は、えてして硬水になりがちだけれど、かつて大陸と地続きだったことから、対馬では軟水で酒造りができるそうです。

 対馬の名峰から名前をもらった日本酒「白嶽」は賞に輝く看板アイテム。1970年まではこの銘柄一本だったそう。1970年になって麦焼酎8:米焼酎2をブレンドした麦米焼酎の「やまねこ」が登場。すっきりと澄んだ、飲みやすい焼酎です。

 続いて川沿いにある「つしま総本舗」へ。こちらは1887年創業で、かつては数軒あったものの今ではここだけの醤油醸造所。店内にはオーソドックスな醤油のみならず、タイ、イカ、カツオなどそれぞれの魚に合うようにつくられた刺身醤油や、アオサ入り醤油など、バラエティ豊か。醤油ソフトクリームもコクがあって、おすすめです。