「死体部屋」に遭遇することも日常茶飯事。家賃を滞納している人に督促をする、家賃保証会社の仕事とは?【書評】

AI要約

『出ていくか、払うか 家賃保証会社の憂鬱』は、家賃保証会社の社員が家賃滞納者に督促する仕事を通して、人々の生活や日本社会の現実を描いたコミックエッセイ。

主人公は家賃が払えなくなった人たちの事情を知り、家賃滞納者たちの人生と向き合う苦悩を描く。様々な滞納者の姿が描かれ、読者に共感と考えさせる。

家賃支払いにまつわるトラブルや課題、日本社会の現実を考えさせる一方、家賃に関する雑学も盛り込まれ、読み応えのある作品。

「死体部屋」に遭遇することも日常茶飯事。家賃を滞納している人に督促をする、家賃保証会社の仕事とは?【書評】

 生きていくうえで必要不可欠な衣食住。何を重視するかは人それぞれだが、一番お金との関わりが深いのが住まいではないだろうか。そんな住まい・家賃をテーマにした『出ていくか、払うか 家賃保証会社の憂鬱』(鶴屋なこみん:著、0207:原案協力/KADOKAWA)は、家賃保証会社の社員の仕事から日本の現実が垣間見えるコミックエッセイだ。

 高齢化が進んだことで保証人をつけることが難しくなった現代、家を借りるために多くの人が利用する家賃保証会社。利用したことがある人も多いであろう家賃保証会社で働く主人公の仕事は、家賃を滞納している人に督促をすること。家賃が払えなくなった人たちには一体どんな事情があるのだろうか。生活保護を受ける人やデリヘルで働く女性、裕福な滞納者など、彼らの人生と共に家賃保証会社の仕事を覗き見できる。

「死体部屋」に遭遇しても、よくあることだと冷静に対応できてしまう。恨みをかいやすい仕事ゆえに嫌がらせを受けることも珍しくない。「出ていくか、払うか」を迫るだけの仕事のはずなのに、家賃滞納者たちの人生に思いを巡らせて苦悩する主人公の姿に、読者も思いを巡らせてしまう。同時に滞納している人たちの苦しい事情や、それでも必死に払おうとする人の姿も描かれ、胸が痛くなる。

 それでも読み進めたくなるのは、本書で描かれていることが決して他人事ではないからだ。大きな支出である家賃は、その支払い方法ゆえにトラブルが生じやすく、誰もが直面する可能性がある。また超高齢社会の日本における課題でもあり、目を背けてはいけないと思わされる。また、賃料や制度などの雑学が盛り込まれており、学ぶことも多い点も魅力のひとつだ。

 本書は、家賃という身近なテーマを通して、生きることの難しさや日本が抱える問題を教えてくれる。多くの人々に読んでもらいたい不思議な魅力のある1冊だ。

文=ネゴト / Ato Hiromi