思わず体が揺れる! 音楽と活気に満ちたスペイン・イビサ島のヒッピーマーケット「ラス・ダリアス」

AI要約

イビサ島は、音楽が満ちる島であり、若者たちだけでなく年配客も楽しむ場所となっている。

ヒッピー市場や音楽フェスティバルなど、イビサ島は観光資源としても知られており、多様なエンターテイメントを提供している。

ラス・ダリアスは、島で最も古いマーケットであり、音楽の歴史や文化が息づく場所として栄えている。

思わず体が揺れる! 音楽と活気に満ちたスペイン・イビサ島のヒッピーマーケット「ラス・ダリアス」

文・写真/パーリーメイ(海外書き人クラブ/欧州在住ライター)

民家の扉越しに聞こえるラテン楽曲、タクシーの車内はロック、ちょいワルオヤジが運転する市バスはテクノ。

スペインの東沖に浮かぶバレアレス諸島のひとつ、イビサ島は、ありとあらゆるジャンルの音楽が島中で鳴り響く“音の島”だ。夏の時期は特に、世界各地から若者が大挙し、ビーチやクラブで昼夜問わず狂宴を繰り広げるが、音に合わせて踊りだすのは、なにも若者に限ったことではない。

イビサ島北東部の町サン・カルロスには、年配客も嬉々として集い体を揺らすヒッピー市場「ラス・ダリアス(Las Dalias)」がある。厳選された商品が並び、8月の繁忙期は毎週土曜日に、およそ2万人が訪れるという活気に満ちた観光スポットだ。

塩作りやアーモンド栽培など、第1次産業が中心のひなびた漁村だったイビサ島が、観光地として歩み出したのは1930年代の頃。バレアレス諸島最大のマヨルカ島の隆盛を受け、イビサにも宿泊施設の需要が起きたためだが1960年代には、とある若者たちの流入により、さらなる転換期を迎える。

1975年まで続いたフランコ長期独裁政権や、ベトナム戦争による鬱屈した雰囲気を嫌い、アメリカやスペイン本土から逃れてきた彼らは平和と愛を謳い、反戦、反社会体制を主張するヒッピーだった。

前衛的な彼らの定住は、自由で開放的な雰囲気を島にもたらし、海外からの芸術家や観光客の著しい増加に繋がった。

イビサ島にはラス・ダリアスだけでなく、ほかにも大小複数のヒッピー市場があり、いまや主要な観光資源のひとつとなっている。

1973年、木陰で手工芸品を売っていたヒッピーたちに、ホテル経営者が場所を提供したことから始まった「プンタ・アラビ」は、毎週水曜日に開かれる島最古、かつ最大のマーケットとして知られる。

一方ラス・ダリアスは1954年、ヨーロッパにおける“ヒッピーの聖地”として名高いサン・カルロスで生まれた、家族経営のバーに端を発する。

農家で大工でもあったジョアン・マリ氏が開いた、ダンスフロアつきの路面バーは、はじめ地元民の憩いの場としてにぎわった。観光の大衆化が進んだ60年代は、バーベキューとフラメンコショーをかけ合わせた新型レストランが大当たり。

仕事を終えたヒッピーたちのたまり場となった70年代以降は、即興演奏を定期開催するなど、時代に合わせて進化してきたラス・ダリアスのかたわらには、常に音楽があった。

現オーナーのフアニート氏が、2020年に英マンチェスターのラジオ局で語った話によると、レゲエの先駆者ボブ・マーリーや、イギリスの伝説ロックバンド「クイーン」のギタリストのブライアン・メイや、「ローリング・ストーンズ」のボーカルのミック・ジャガーといったそうそうたる人物たちも、気軽に顔を出していたという。

1985年に5軒の露店から興したマーケットは現在、ハンドクラフト製品や特産品などを販売する出店者が、300を超えるほどにまで成長し、フラメンコ・ショーや音楽ライブ、アート、演劇といったエンターテインメントも提供している。