世の中の物事はとびとびである。/執筆:野村泰紀

AI要約

量子力学は、ニュートンの古典的な物理学が通用しない原子の世界の真の仕組みを明らかにした理論であり、原子の構造や動きを説明します。

20世紀初頭に発展した量子力学は、驚異的な正確さで実験結果を説明できるが、常識を覆すような奇妙な現象も予言します。

量子力学によれば、世の中の物体は連続的ではなく「とびとび」であり、微小なステップが連続に見える現象が起こっていることが明らかになりました。

世の中の物事はとびとびである。/執筆:野村泰紀

さて、第2回である今回は、さっそく量子力学とはどのようなものなのかについて、解説していこうと思います。もちろん、量子力学を数式を使って完全に理解するには、大学の授業でも1~2年かかるほどなので、ここでは当然無理なのですが、それでもその不思議さの一端でも伝わればよいなと思って書いていこうと思います。

まず、量子力学とは、20世紀の初めに、それまで「無敵」だと思われていたニュートンの理論が実は全く通じない世界が存在することが分かったことで明るみにでた、世の中の「真の仕組み」のことです。具体的には、皆さんも聞いたことがあると思いますが、世の中の全てのものは100種類ほどの、原子とよばれる小さな「もの」で出来ています(大きさは、種類にもよりますが、直径0.0000000001メートルほど)。

そして、その原子は、中心に原子核と呼ばれるかたい「芯」のようなものがあり、そのまわりを電子と呼ばれる「つぶ」が回っているという構造をしていることが20世紀初頭に明らかになってきます。しかし、これまで物理学の基本理論と思われてきたニュートンの理論をこれに当てはめてみると、なんとそのような構造は存在できないという結論になることが分かったのです。

もっと詳細に言うと、ニュートンの理論を使ってこの構造を解析してみると、原子核のまわりを回っている電子は、光を出しながらエネルギーを失っていき、それによって中心の原子核の方に落ち込んでいってしまうという結論になることが分かったのです。そして、そのようにして原子が壊れてしまうまでの時間は、計算によれば0.00000000001秒ほどだということが分かったのです!

しかし、実際に世の中に原子は存在し、それはそんな一瞬で壊れてしまうことはありません。もしそうであれば、私たち人間はおろか、世の中の物質はすべて存在できないということになってしまいます。

つまりこれは、それまで絶対的に正しいと思われてきたニュートンの理論が、なにか根本的なレベルで間違っている(より正確に言えば「不完全である」)ということを意味しているのです。そこで正しい理論はどんなものなのかということを当時の物理学者たちが試行錯誤を続け、その結果見つけたのが量子力学だったのです。

量子力学は、1925~1926年頃にはその大枠は完成し、現在までに行われたすべての実験、観測をすさまじい精度で説明する驚異的な理論です。その意味で、その正しさに疑う余地はありません。しかし、一方でこの理論は、私たちの日常の感覚とは矛盾するような、様々な現象の存在を予言します。今回はその一つである「世の中はとびとびである」ということを紹介したいと思います。

私たちは通常、世の中に存在する物体のエネルギーや位置、速度などの量は、連続的にどんな値でも取れるものだと考えています(そして20世紀初頭の物理学者たちもそう考えていました)。たとえば、自動車を加速していくと、その速度は連続的に大きくなっていきます。時速10キロメートルの次は時速20キロメートルに跳び、その次は時速30キロメートルに跳ぶといったことはありません。

しかし、実は自然界では、これらの量は本当は「とびとび」だったのです。ただ、その「とび」のステップがものすごく小さいために、私たちには連続に見えていただけだったのです!