”夫が無事”という偽情報が次々…「アメリカ同時多発テロ」被害者の家族を襲ったもの

AI要約

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロで犠牲になった杉山陽一さんの妻・晴美さんが、夫の行方を捜す中での心境や情報を友人たちにメールで伝える様子が描かれている。

晴美さんは夫が一度避難した後、80階のオフィスに戻った可能性があることを話し、航空機の衝突によって夫の安否がますます危ぶまれている状況を説明している。

混乱と不安が渦巻く中、晴美さんは最後まで夫の安全を信じ、メールを通じて皆に支えられる中で、自らの心境を伝えている。

”夫が無事”という偽情報が次々…「アメリカ同時多発テロ」被害者の家族を襲ったもの

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ。航空機がワールドトレードセンターに突入し、ペンタゴンにも襲い掛かったたこのテロ事件で、日本人24人を含む約3000人が亡くなり、負傷者は6000人以上とされている。

このテロ事件で犠牲になった杉山陽一さんの妻・杉山晴美さんは当時3歳と1歳の子供がおり、お腹にも3人目の赤ちゃんがいた。そんな中で捜索活動に出て、現場の話から、陽一さんは一度1階まで避難したけれど、「安全です」というアナウンスで80階のオフィスに戻ったのではないかという話を聞く――。

晴美さんの連載第2回を2024年に再編集してお届けする後編では、その話を聞いたのちに友人たちに送ったメールを入り口に、陽一さんのご両親や晴美さんの母もNY入りしした「現場」の話をお伝えする。能登の地震のときにも、フェイクニュースがSNSに拡散された。藁をもすがる思いで行方不明者を探す家族や友人にとって、どれだけ「偽情報」が残酷なものだろうか。

前編「一度避難していた?「アメリカ同時多発テロ」行方不明の夫の「当日の行動」」より続く

【9月13日、友人たちに送ったメールより】

わたしの夫、富士銀行員杉山陽一の名前が、アメリカ同時多発テロで日本のメディアでも行方不明者として報道されております件につき、みなさま方には大変ご心配をおかけしております。

何通ものお見舞いのメールを頂戴し、取り急ぎ現段階でわたしの入手しております情報をお伝えいたしますとともに、とりあえず、子供ふたりとわたしはなんとか元気でおります旨、ご報告申し上げます。

現時点での夫についての情報ですが、となり、北側のビルに航空機が衝突した直後、エレベーターで1階までいったんは無事下りたものの、そこで南側のビルの安全を伝えるアナウンスを聞き、また80階にあるオフィスに再び戻ってしまったと推測されております。

そしてその後、報道にもありますとおり、こちらのビルにも航空機激突。はっきりはしておりませんが、79階から90階付近に突っこんだもよう。富士銀行のオフィス直撃とのうわさもあり、現在主人の安否がますます危ぶまれているのが実情であります。ただ、混乱時のエレベーターが衝突時どこまで上がっていたかは定かではなく、負傷して病院にいる可能性も残っているため、わたしたちは最後の最後まで主人の存在を信じ、帰りを待つばかりであります。

いろいろとご心配をおかけして申し訳ありませんが、はっきりとした事実が判明するまえ、みなさまも一緒に主人の無事を祈っていただけたら幸いです。

では取り急ぎご報告、そしてメールをくださった方々にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。

杉山晴美