「セカンドオピニオンの注意点」複数の病院を天秤にかけて受診の“いいとこ取り”はNG【ワンニャンのSOS】

AI要約

ワンちゃんのセカンドオピニオンについての注意点

高齢のワンちゃんの治療における状況と検討過程

複数の病院を掛け持ちすることのリスクと問題点

「セカンドオピニオンの注意点」複数の病院を天秤にかけて受診の“いいとこ取り”はNG【ワンニャンのSOS】

【ワンニャンのSOS】#78

 病気の治療や症状などに疑問があれば、セカンドオピニオンを求めることがあると思います。ペットでも珍しくありません。しかし、その行動の取り方によっては、あまりよい印象を持たれないことがあります。

 あるワンちゃんは10年ほど前にヘルニアの治療とリハビリでしばらく通院していましたが、リハビリの途中で心臓の疲れから弁膜症を発症。飼い主さんは別のかかりつけ医の紹介で当院のリハビリに期待されていたので役に立てず、申し訳ない気持ちでした。

 そのワンちゃんが18歳になり、久しぶりに来院しました。相談内容は、かかりつけ医は麻酔下で歯石と歯槽膿漏の治療をするとのことで、高齢だけに麻酔を心配されて来られたのです。「口のケアだけ」という主張はあまり気持ちのよいものではありませんでしたが、ヘルニア治療でコミュニケーションが取れていることもあり、心臓の治療についてかかわらないことを条件に、受け入れました。それでも、心臓病の薬や心音の確認はしています。

 すると、口の洗浄中や洗浄後に2週続けてヘタリ込みが強くなり、心音の悪化が見られ、「最近受診したか? 症状の悪化を伝えられていないか? 薬は増量されていないか?」の3点を確認すると、いずれもNOでした。この症状では、口の洗浄中に虚血性ショックを起こしかねないので、当院で内服薬を再検討。エコー検査などを基に処方薬をベースに薬を増量したのです。

 薬が合うか検証するため10日分を処方すると、当院としては使用を避けたい薬が含まれていて当院にはなく、その弱いタイプに切り替えると、よくならなかったので、その薬についてのみ元のかかりつけ医で処方してもらうことで落ち着きました。

 それで病状は改善したのですが、しばらくして飼い主さんが自分の病気の治療で帰省するとのことで、ワンちゃんは実家で面倒を見るため処方内容を教えてほしいと連絡がありました。それは仕方ないので、実家に帰るまでの数日分のみ処方して実家近くの獣医さんへのメモなども添えて渡したのです。

 実はこの飼い主さん、元の病院と天びんにかけていたようで、後日、こんな相談を受けました。

「数日分の薬では心配なので、元の先生に1カ月分を処方してもらいました。それで足りない分について、処方日数を合わせて出していただけませんか? それと、エコー検査もしてください」

 そこではエコー検査をされて、18歳という高齢なら当然、起こりうる症状をいろいろと指摘されたことが不安を募らせたようです。

 複数の病院を掛け持ちして、“いいとこ取り”のような受診スタイルを取られる飼い主さんは時々いますが、あまりお勧めできません。Aで処方された薬の不足をBに求め、Bでされた検査と同じ検査をAに要求する。そんなことをしていると信頼関係が損なわれますから。

(カーター動物病院・片岡重明院長)