介護する飼い主もつらい…病気で苦しむ老ペットの“晩年の問題”【ワンニャンのSOS】

AI要約

高齢者が介護状態になると、ペットの晩年の問題も考えなければならない。

ペットの老後の問題は病気が主な原因であり、がんや慢性疾患、認知症などが悩みの種となる。

ペットも尊厳死や安楽死について考える時代が訪れるかもしれない。

介護する飼い主もつらい…病気で苦しむ老ペットの“晩年の問題”【ワンニャンのSOS】

【ワンニャンのSOS】#77

 高齢者が介護状態になり、家族で世話をしきれなくなると、介護施設への入居を考えると思います。その施設にはいくつか種類があり、中でも公的な特別養護老人ホームは費用が安く、入居するのは大変です。実はペットも高齢化していますから、飼い主さんには“晩年の問題”が多くのケースでのしかかることをご存じでしょうか。

 ペットで老後の問題が生じる原因として大きいのは病気で、1つは末期がん、2つ目は心臓病や腎臓病など慢性疾患の悪化、第3は認知症です。ヒトの場合と変わりません。順に見ていきましょう。

 がんの場合、消化器系の末期では、巨大化した腫瘍によって食餌の通過障害が生じ、消化機能が停止。骨肉腫などでは激しく痛み、脳への転移や神経系の腫瘍だと神経系の症状が止まらなくなります。いずれも見ているだけでつらい。

 慢性疾患では、ワンちゃんの場合は心臓弁膜症による肺水腫で咳が止まらなくなり、かなり苦しがります。ネコちゃんに多い腎臓病の悪化では、けいれんをはじめとする神経症状が続きます。尿毒症によるものです。これも飼い主にはかなりきついでしょう。

 そして、最も厳しいのが認知症です。ワンちゃん、特に柴犬によく見られます。症状は徘徊や夜鳴きが典型で、遠吠えのような鳴き声が朝夕関係なくみられます。飼い主さんも寝られず、ノイローゼになることは珍しくありません。そこに近隣からの苦情が重なると、より深刻です。

 そういった状況を動物愛護センターや保健所に相談しても、まず引き取ってはくれません。飼い主さんは治療の継続を説明されたり、終生飼育を促されたりするのが現実です。認知症の症状のつらさや近隣の苦情、飼い主さんの精神的な限界を伝えても、です。

 動物愛護管理法との関係で、そういう施設のスタッフもなかなか飼い主さんに添う形では動きにくいのですが、すべてNOということでもありません。長く当院をかかりつけにされた女性は、ご自身もがんになり、入院するたびに、ワンちゃんを当院に預けて治療されていました。

 その一方で保健所にも何度となく相談されていたようで、その方が亡くなると、スタッフがかなり足を運んでくれ、老犬ホームの引き取り先探しなどかなり熱心に対応してくれたことが印象に残っています。

 そのワンちゃんは結局、飼い主さんとの長い付き合いもあって、当院で最後まで面倒を見ることにしましたが、今後は保健所や動物愛護センターが引き受けることも必要になるのではないかと思います。

■ペットの尊厳死や安楽死も…

 そして、ペットもやっぱり認知症の対応です。今後はペットの尊厳死や安楽死も、ヒトと同じように大きなテーマになっていくのではないでしょうか。これだけ高齢のペットが増えると、前述したような症状は、人ごとではありませんから。

(カーター動物病院・片岡重明院長)