「高校一」を決めるインターハイ、1500mは男女とも好記録、女子の穗岐山は高校歴代3位、男子の濱口は高校歴代5位

AI要約

女子1500mは、日本人ランナーと留学生選手が激しいレースを展開。日本人トップのドルーリーが積極的な走りを見せるも、最終的に11位に終わる。

穗岐山が驚異的な走りで日本人トップに立ち、高校歴代3位の記録で銅メダルを獲得。笑顔で次なる目標に向かう。

男子1500mでは濱口が留学生選手との真っ向勝負を挑むが、2位に終わる。自身のタイムには不満を口にし、5000mでも優勝を目指す意気込みを見せる。

 文=酒井政人

■ 女子1500mはドルーリーが攻めの走り

 未来のオリンピア候補が福岡・博多の森陸上競技場で〝高校ナンバー1〟を目指した。そのなかで1500mは男女ともハイレベルの戦いになった。

 女子1500mは800mで1分59秒93の日本記録を持つ久保凛(東大阪大敬愛高)は棄権したが、4人のケニア人留学生と6月の日本選手権で7位入賞を果たしたドルーリー朱瑛里(津山2)が決勝に進出した。

 ドルーリーは昨年、インターハイで日本人トップの3位に入り、高1歴代最高の4分15秒50をマークしている選手。日本選手権のレース後には、「高校記録(4分07秒86)の更新を目標に頑張っていきたいと思います」と話していた。

 そして決勝ではドルーリーが積極的な走りを披露する。4人の留学生に割って入るかたちで3番手につけると、先頭は400mを66秒、800mは2分14秒で通過した。

 しかし、「脚がぶつかることもあって、中盤からリズムが崩れてしまいました。そこから流れに乗れなかった感じです」とドルーリーは徐々に先頭集団から引き離されていく。最終的には4分21秒82の11位でレースを終えた。

 「先頭集団に食らいついて、ラストでかわすというプランを持っていましたが、思うような走りができませんでした。プレッシャーを感じることもあったんですけど、弱点を克服して次に向けて頑張っていきたいと思います」

 ドルーリーは8月下旬にペリー・リマで開催されるU20世界選手権の女子1500m代表に選ばれており、今回の反省を世界の舞台でぶつけるつもりだ。

■ 穗岐山が高校歴代3位の好タイム

 ドルーリーの背中を見つめて走ったのが4分17秒92の四国高校記録を持っていた穗岐山芽衣(山田3)だ。

 留学生が高速レースに持ち込むことを予想して、先頭集団にはつかなかった。「例年、先頭集団はだんだん落ちてくる感じがあったので、一定の距離を置いて、離されないように走りました」と冷静にレースを進めた。

 そして3周目に入ると、「雲の上の存在だと思っていた」というドルーリーの背中に迫っていく。そして穗岐山が〝覚醒〟した。

 「ドルーリーさんの活躍はテレビなどで見ていて、速くて凄いなと思っていました。そんな選手の背中が近づいてきて、今までの自分ならドルーリーさんより上にいく力はないという気持ちがあったんですけど、これまでのしんどかった練習や、お世話になった方々の顔が頭に浮かんで、『自分なら絶対にできる』と思ったんです」

 ラスト1周に入る直前にドルーリーを抜いて日本人トップに立った。さらにふたりの留学生をかわして、最後はナンバラ・サラムトニ(興譲館1)に迫って、ゴールに駆け込んだ。

 優勝はジャネット・ジェプコエチ(倉敷2)で4分07秒59、2位はサラムトニで4分13秒04。穗岐山は高校歴代3位の4分13秒67で銅メダルを獲得した。

 「ドルーリーさんは絶対に勝てない存在だと思っていたので、その他の日本人選手のなかでトップになりたいという気持ちで臨みました。監督から『留学生の力を借りて4分15秒までいけたら凄いぞ』と言われていたので、タイムは大満足ですね。3年生になって、練習一本一本に集中して取り組んできたのが、ここまで伸びた要因だと思います」と穗岐山は笑顔を見せると、「3000mでも表彰台を狙って頑張りたい!」と声を弾ませた。

■ 男子1500mは濱口が留学生と真っ向勝負

 男子1500m決勝は高校歴代2位に相当する3分37秒82のベストを持つフェリックス・ムティアニ(山梨学大2)に濱口大和(佐久長聖3)が果敢に食らいついた。

 ムティアニは400mを58秒で突っ込むと、濱口以外の選手はペースを落とす。500m以降はふたりのマッチレースになった。先頭は800mを1分58秒、1200mを2分59秒で通過した。ラスト勝負に持ち込んだ濱口は、「もしかしたら勝てるかなと思ったんですけど、ペースアップされたところで対応できませんでした」と残り200mで引き離される。

 ムティアニが3分40秒66で完勝。濱口は最後まで懸命に駆け抜けて、3分43秒58の2位、チームメイトの佐々木哲(佐久長聖3)が3分46秒67で3位に入った。

 濱口の記録は高校歴代5位の好タイム。勝負に出ての〝価値ある日本人トップ〟だが、本人は不満を口にした。

 「今回はタイムより勝負にこだわってレースをしました。ムティアニ選手は抜けていたと思いますが、U20世界選手権(3000m、5000m)の代表が決まっている身として、留学生とも勝負していかなければいけません。ラスト300mで3秒も離されて自分に力がないと思います。自己ベストを2秒更新したんですけど、あまり意味はないかな。本当に『悔しい』の一言です。5000mにも留学生がいますが、そこでもしっかり戦いたい。狙うは日本人トップじゃなくて優勝です」

 男子5000mは濱口とともにケニア人留学生5人が決勝に進出した。濱口は昨年、2年生以下の日本人で唯一の入賞(8位/日本人4位)に食い込み、今年は6月のU20日本選手権5000mで大学生を抑えて優勝している。はたしてインターハイの舞台で32年ぶりの〝日本人V〟にどこまで近づけるのか。