「まずはマナーを守れ」 愛煙家の岸博幸氏が“肩身が狭い”と嘆く喫煙者に伝えたいこと「だから目の敵にされる」

AI要約

岸博幸氏は元官僚であり、多発性骨髄腫と診断を受けながらもたばこをやめず、価格の上昇についてもコメントする。

たばこ価格の上昇は他の先進国に比べればまだ安いと述べ、喫煙者側のマナーの悪さを指摘する。

喫煙所は少ないが、増やすべきかどうかは議論が分かれると考えている。

「まずはマナーを守れ」 愛煙家の岸博幸氏が“肩身が狭い”と嘆く喫煙者に伝えたいこと「だから目の敵にされる」

 現在61歳の岸博幸氏は元通商産業省(現:経済産業省)官僚で、元総務大臣秘書官。現在は慶應義塾大学大学院教授として教鞭をとる傍ら、歯に衣着せぬ発言でメディアでも多方面に活躍している。昨年1月、血液のがんである「多発性骨髄腫」罹患が判明。「余命10年」を宣告されたが、愛煙家としても知られる同氏は“それでもたばこはやめない”と公言している。インタビュー後編では右肩上がりのたばこ価格と、規制が強まる日本の喫煙環境の本当の問題点について聞いた。(取材・文=角野敬介)

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――たばこの価格についてですが、先生が吸い始めた頃と今とを比べるとかなり上がっていますよね。現在の価格については経済評論家の視点ではどう感じますか。

「僕はまだ全然安いと思いますよ。この4月にニューヨークに行きましたけど、たばこの値段が最も高い場所では1パック20ドルしましたから。今の為替に換算するなら約3000円ですよね。こういう価格に代表されるように、今やアメリカ、ヨーロッパはどこに行ってももう1000円は軽く超すわけです。日本と同様に大半が税金です。やっぱり、たばこは体に悪いというのが染みついちゃっていて、こういう風に値段が高くなっている。だから日本は先進国の中では例外的に僕は安いと思っています」

――今後、ニューヨークと同様に1箱3000円になっても吸い続けますか。

「さすがに2000円を超えたら悩みますね。でも1000円くらいなら吸いますよ。たばこの適正価格は、他の先進国との比較で今の価格よりはもっと高いとは思っています。あくまで嗜好品ですから、アメリカなんかでもコーヒー好きな人は1杯2、3000円のものを飲んでいるわけです。それと同じ感覚です」

――今後、日本でも値段が上がるとすれば、その多くは税金に充てられることになると思います。喫煙者として、税金をたばこ関係に使ってほしいなど希望はありますか。

「多少はありますけども、ただ広く税収全体の構造を見た場合に、税収が全然足りない中で、財務省が取りやすいところから取っています。たばこで税金を増やしたから全部たばこ関係に使うということは、財政の全体像をわかっている人間からすれば、無理は言えないよなという気はします」

――喫煙者と非喫煙者の共存について、最も必要なことはなんだと思われますか。

「僕はシンプルに、喫煙者の側に問題があると思うんですよ。マナーが悪い人が多すぎる。例えばたばこが吸える喫茶店なんかに行ったら、近くに吸わない人がいたとしても、自分が吸っている火のついているたばこを灰皿に置きっぱなしにして、煙がどちらに流れているのか気遣いもしない。たばこが吸えない屋外でも、吸い殻をそのままポイ捨てするやつらがいる。

 僕は喫煙者として、喫煙者側のマナーも非常に悪いなと思っています。やっぱりこうしたことが、たばこが目の敵にされる原因じゃないのかなと思いますね。喫煙できる場所が減って、たばこへの規制も一層厳しくなると、喫煙者からすると迫害されているという思いもあるでしょうけど、そもそもたばこを吸う側のマナーがどうなのか。まずはそこから反省しようという風には思っています」

――前編でも話題に上がりましたが、吸える場所が減っているのもマナーの悪化につながっているのでしょうか。喫煙所はやはり少ないと感じますか。

「それは少ないとは思いますね。でもこれはしょうがないでしょう。増えた方がいいとは思いますが、これだけ喫煙者の割合が少なくなっている中で、じゃあその人たちのためだけに増やすのかというと別問題だと思いますから、そこはしょうがないよねと。だから与えられた条件の中で頑張るしかないだろうなと思っています」