「野球肘に悩む子ども減らしたい」元高校球児の医師が診断AI開発 痛みに苦しんだ経験、原動力に

AI要約

京都府立医科大などの研究グループが、野球肘を患う子どもたちを減らすために、AIを使った高精度な野球肘検出プログラムを開発した。

野球肘は投球動作によって引き起こされる疾患であり、早期発見が重要であるが、専門医の不足のため検診機会が不十分だという課題がある。

木田助教は野球部員時代に野球肘を経験し、スポーツドクターを目指すきっかけとなった。今後はプログラムをさらに発展させ、一般の病院や少年野球大会などで利用できるようにする予定だ。

「野球肘に悩む子ども減らしたい」元高校球児の医師が診断AI開発 痛みに苦しんだ経験、原動力に

 「野球肘」に悩む子どもたちを減らしたい-。京都府立医科大などの研究グループが、野球をしている少年の肘に発症する野球肘の病変を、人工知能(AI)を使って高精度で見つけるプログラムを開発した。中心メンバーの医師は少年時代に重度の野球肘で苦しんだ経験があり、「子どもたちに思う存分プレーしてもらうため、プログラムを早期発見に役立てたい」と期待を寄せる。

 野球肘は「離断性骨軟骨炎」という疾患。成長期の小中高生が投球動作を繰り返すことで、肘関節の骨や軟骨に負担がかかって起きる。中高生球児の1~3%が野球肘を抱えているとされる。

 初期は症状がほとんど出ず、安静にすれば自然に治ることが多い一方、痛みなどが出た時は既に疾患が進行しており、手術が必要になるケースが多い。早期発見を目的に、医師が各地を巡って野球肘の超音波検診を行っているが、専門医の不足などで検診機会は十分でないという。

 プログラムを開発したのは、府立医大の木田圭重助教や髙辻謙太医師らのグループ。2020年ごろ、兵庫県立大と協力して野球肘の検出にAIを活用する研究に着手。コンピューターに患者196人の超音波画像数千枚を入力し、野球肘に特徴的な画像パターンをディープラーニング(深層学習)させる手法で学ばせた。その結果、超音波画像を基に97%の精度で野球肘かどうかを判断できるようになったという。

 洛星中高で野球部員だった木田助教は中学2年時に右肘に痛みが走り、手術を経験した。プレーできない苦しい時期を過ごしたことがスポーツドクターを目指す原点となり、現在は整形外科医としての診療や研究の傍ら、府内を中心に野球肘の検診を続けている。

 今後、企業の協力を募り、プログラムを活用した自動診断システムの開発を目指す。木田助教は「将来的には一般の病院や少年野球大会の会場などで、野球肘かどうかを簡単に診断できるような仕組みにしていきたい」と話している。

 研究成果は5月に米科学誌に掲載された。