仕事で「5分」の残業をしたら、上司に「ウチでは切り捨てだよ」と言われました。5分くらいでも“残業時間”にカウントされますか? 実際どうなのでしょうか?

AI要約

残業申請において、短時間の残業であっても労働時間を切り捨てて申請することは問題がある。

賃金の支払い方法に関する5原則に基づき、労働時間を切り捨てることは認められない。

労働時間の端数を切り捨てることは労働時間管理の観点からも正しくない。

仕事で「5分」の残業をしたら、上司に「ウチでは切り捨てだよ」と言われました。5分くらいでも“残業時間”にカウントされますか? 実際どうなのでしょうか?

残業の申請方法は会社によってさまざまですが、基本的には上司の承認が必要となるケースが多いでしょう。しかし、中には「あれ?」と思うような残業申請をするように上司から指示された経験がある人もいらっしゃるかもしれません。

本記事では短時間の残業であることを理由に、労働時間を切り捨てて残業申請することの問題点について解説します。

結論としては、短い時間であっても、原則として労働時間を切り捨てることは認められません。認められない理由には、賃金の支払い方が関わっています。

賃金の支払い方法は、労働基準法第24条で決まっており、賃金支払いの5原則といわれています。以下の原則に基づいて、会社は従業員に賃金を支払わなければなりません。

■通貨払いの原則

例えば日本円など、一般的に流通する通貨で賃金を支払わなければなりません。現時点の価値が非常に分かりにくい現物による給与支給を禁じています。

■直接払いの原則

働いた本人以外に賃金を奪われないよう、原則として直接本人に支払わなければならないと定められています。

■全額払いの原則

直接払いの原則と同じく、労働の対価として受け取るべき賃金が、滞りなく働いた本人の手元に届くよう、一度に全額を支払うことが決められています。ただし例外として、税金の源泉徴収など、一部控除が認められているケースもあります。

■毎月払いの原則

賃金をいつ受け取れるのかが分からないと、収入のタイミングが読みづらく、不安を抱えながら生活することになってしまいます。そうならないために、支払い間隔が開きすぎることがないよう、毎月支払うことが定められています。

■一定日払いの原則

毎月払いと同様、支払われる日も一定でないと計画的な生活ができなくなってしまいますので、毎月決まった日に支払わなければなりません。

賃金支払いの基になる労働時間を切り捨てて申請することは、働いた分の賃金が支給されないこととなり、賃金の全額払いの原則に反してしまいます。

また、会社によっては労働時間管理が、15分単位などで決められているケースもあるでしょう。しかし原則的には、労働時間の把握は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理です。この観点からも、労働時間の端数を常に切り捨てることは正しいとはいえません。