「これ以上散歩はできません」多頭飼育現場から救出された秋田犬が譲渡先から戻った理由

AI要約

16頭の秋田犬が救出された多頭飼育現場からの1歳の男の仔、ハク。

飼い主の餓死した犬たちを含む凄惨な状況と、救出された後のハクの成長過程。

愛情と訓練を受け、最終的には里親が見つかり、成長したハクの物語。

「これ以上散歩はできません」多頭飼育現場から救出された秋田犬が譲渡先から戻った理由

 秋田犬のハクは、多頭飼育現場からレスキューされた16頭のうちの1頭、推定1歳の男の仔だ。

現場となった飼い主の50代の会社員宅には、地元の動物愛護センターが何度も訪れて注意したが、水さえ与えられず、5頭は餓死している。

救出された犬たちは、センターに一時保護され、飼い主は動物愛護管理法違反で逮捕された。

 “保護活動”という呼び方も知らない小学生の頃から、捨て犬や猫を拾って、体をきれいに洗ってやり、里親探しを続けてきた坂上知枝さん。

2020年に設立した動物支援団体「ワタシニデキルコト」での活動や、これまで出会った保護犬猫とのエピソードを語っていただく連載の後編は、救出されたハクのその後である。

 前編「水さえ与えられず5頭が餓死…21頭の多頭飼育現場から救われた秋田犬が怯えたもの」では、ハクを含む16頭が凄惨な現場から救出され、坂上さんが代表を務める「ワタシニデキルコト」の手で、預かりさん宅で過ごすところまでをお伝えした。

 後編では、無事里親が見つかったにもかかわらず、「ワタデキでは初めてのケース」となる思わぬ事態の顛末をお聞きした。

 以下、ライターの長谷川あやさんの取材でお届けする。

 「ネグレクトの飼い主から、16頭すべての所有権を放棄させることができたのは、地元の福島県センターや警察の方、現地の保護活動家さんたちの『動物を助ける! 守る! 』という気持ちが一致団結した結果だと思っています」(坂上知枝さん、以下同)

 その中から、坂上さんが立ち上げた、動物支援団体ワタシニデキルコト(以下、ワタデキ)が引き受けたのが、「いちばん若いと思われる、オスのハク」だ。

 「どの仔も細くて小ぶり、ハクもセンターに預けられた当初は14キロしかありませんでした。ハクを預かりボランティアさん宅に託した時には17キロになっていましたが、散歩の経験がなかったハクは、ちょっとした生活音にひどくおびえる状況で、首輪をつけるところからのスタートでした。

 そんななか、預かりさんは、初めて耳にする音を怖がるハクのために、朝4時起きで、まだ誰もいない静かな海岸に連れていき、少しずつ道を歩く練習をさせてくれました。

踏み切りやバイクの音や、ドッグランでお友達と遊ぶことの楽しさなど、たくさんのことを教えてもらったハクは、ついに21キロの、ちょっと小ぶりだけれど、立派な秋田犬に成長。里親さんのところにトライアルに行くことになったのです。それが去年の12月のことでした」