亡くなったあと何週間も…遺品整理・特殊清掃の実態と相場。自治体が<孤独死>より<孤立死>という言葉を使い始めた理由とは

AI要約

高齢者の単独世帯が増加している中、ひとり暮らしの問題について考察されたエピソード。

病気が原因でひっそりと亡くなり、数週間も気づかれずに遺体が発見される悲劇。

遺品整理と特殊清掃が必要になった事例で、費用は膨大になり、周囲にも影響を及ぼす。

亡くなったあと何週間も…遺品整理・特殊清掃の実態と相場。自治体が<孤独死>より<孤立死>という言葉を使い始めた理由とは

厚生労働省が実施した「令和4年 国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯のうち51.6%が単独世帯となっているそう。そのようななか、生前整理や遺品整理で多くの高齢者のひとり暮らしをサポートしてきた、株式会社GoodService代表の山村秀炯さんは「老後のひとり暮らしには、若い頃や家族と暮らすときとは違った<壁>がある」と話します。そこで今回は、山村さんの著書『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』から、一部引用、再編集してお届けします。

* * * * * * *

◆とある「おひとりさま」の話

とある「おひとりさま」の話をさせてください。

その方は30代の男性で、独身で賃貸アパートの2階でひとり暮らしをしていました。

まだ若いのですが肥満体質で、糖尿病と高血圧をわずらっていました。

その病気が原因で自宅で亡くなったのですが、救急車を呼ぶこともなくひっそりと亡くなったので、誰にも気づかれないままに何週間も経過してしまいました。

仕事はしていたのですが、どうやら毎日オフィスに出勤するような働き方ではなかったようで、連絡が取れなくなっても自宅まで訪ねる人がいなかったようなのです。

普段からきちんと連絡するようなタイプでないと、特に若い男性の場合は、衝動的に旅に出るなんてこともあるだろうと、それほど心配もされません。

人間は生物なので、亡くなってから数日でご遺体が腐り始めます。

それが夏場だったりすると、何週間も経つうちに体が溶けて体液が床を汚します。虫が湧いて、ひどい悪臭を発します。

最終的に下の階の天井に染みと臭いが出てきて、大家さんにクレームが入り、ご遺体が発見されました。

◆遺品整理と特殊清掃

こうして、大家さんから部屋を借りるときの保証人になっていた親族に連絡が入り、その親族から私のところに「遺品整理」のご依頼がありました。

自宅での変死となると警察が来て捜査をするのでご遺体そのものを見ることはなかったのですが、体液による汚れと臭いと虫の群れは、私が訪問したときにも残っていました。

再び人に貸せるように徹底的に臭いをなくしてほしいという大家さんの希望で、遺品整理と特殊清掃を行いました。

体液が下の階にも浸食していたので、下の階の人には一時的に引っ越していただきました。

床を広げると亡くなった場所から3メートルくらいの範囲まで体液が広がっており、広範囲に悪臭の元があって、すべて洗浄した後にコーティングをしていく作業を行いました。

下の階も同様に天井を一部解体して、コンクリートの隙間から垂れていた目地のコーティングなどを行い、遺品整理と特殊清掃を合わせて費用は何十万円にものぼりました。