「痩せ薬」は本当に安全...?日本でも保険適用へ。危険性や使用のルールをおさらい

AI要約

2024年4月から内臓脂肪減少に効果がある治療薬「アライ」が薬局で購入できるようになり、2023年11月には肥満症治療薬「ウゴービ」が保険適用となった。世界的に肥満に関する治療薬の市場が盛んであり、薬の効果や入手方法には違いがある。

「アライ」は内臓脂肪減少を目指す薬で、脂質の吸収を抑制して排出する働きがある。一方、「ウゴービ」はGLP-1受容体作動薬で、食後の満腹感を促すことで食事量を抑制し、糖尿病患者の治療薬としても使用される。

GLP-1受容体作動薬は肥満に関連する健康障害がある人を対象とし、自然な食事制限をサポートするが、適切な使用が必要。リスクや効果の違いを知り、慎重な判断が必要である。

「痩せ薬」は本当に安全...?日本でも保険適用へ。危険性や使用のルールをおさらい

2024年4月から内臓脂肪減少に効果がある治療薬「アライ」が薬局で購入できるようになった。また、2023年11月にも「ウゴービ」という肥満症治療薬が保険適用となった。今世界的に、肥満に関する治療薬の市場が熱いという。

「4月に発売になった『アライ』は、“オルリスタット”と呼ばれる内臓脂肪減少に関する薬です。『ウゴービ』は、“GLP-1受容体作動薬”と呼ばれるもので、ともに肥満に関係する薬ですが、入手方法、効果や使用基準などは異なります。今、欧米では肥満症治療薬の開発が非常に盛り上がっていて、新しい薬が次々と発売されていますが、その中心にあるのは、GLP-1受容体作動薬です」というのは、“筋肉博士”の別名を持つ糖尿病内科医の大坂貴史医師だ。

簡単に2つの違いを解説すると、オルリスタットは、腸で脂質が吸収されるのを防ぎ、便で排出するという働きを持っている。GLP-1受容体作動薬は、食事を摂ると分泌されるGLP-1というホルモンと似た構成を持つ薬剤。胃腸の動きを遅くする働きや、食後の満腹感に関与することを活用し、食べる量を自然に抑えていくもので、主に糖尿病の治療薬として適用されている。「GLP-1受容体作動薬は、日本を含む多くの国で行われた研究で、2021年に肥満患者へのダイエット効果が報告されました。ただし、誰にでも使用できるという薬ではありません。

高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかにかかっている人で、これまで食事・運動療法を行っても、なかなか効果が得られなかったという人が中心です。基準としては、BMIが27kg/㎡以上で、さらに今挙げたような肥満に関連する健康障害が2つ以上ある人、もしくはBMIが35kg/㎡以上の人に限られます。また、糖尿病、循環器、内分泌などの専門医が常駐し、肥満治療に対する体制が整った病院でのみ処方が可能です」。

少し前、糖尿病治療薬が美容クリニックなどで広がっていることが報道されたが、GLP-1受容体作動薬が安易に広がってしまうという危険はないのだろうか。「実際に“メディカルダイエット”という言葉が広がってきているので、今後ますます浸透する可能性はあると思います。ただ自由診療の場合、治療を受ける自由を法で制限することは難しい状況です。保険適用の基準に満たない人でも、職種などにより減量を望む人がいるのも事実。

ですが、肥満に該当しない人が使用すると、痩せすぎになるリスクがあり、低体重によって高血糖、骨粗しょう症、月経異常、不妊などの問題が引き起こされるケースもあります。また、薬だけに頼ると健康を維持するために大切な筋肉量が低下する恐れも。さらに、GLP-1受容体作動薬にはいくつか種類があり、ダイエット効果は一律ではなく、効果が少ない薬を高額で処方しているところもあります。医師として思うのは、こういったリスクをまず知って、自分が使うべきなのか慎重に判断してほしいということです」