ニトリの創業者もADHDとの診断を受けたそう。うまく生かせば、発達障害は大変な長所となり実を結ぶ

AI要約

ADHDやASDといった発達障害は、それぞれの特性を生かすことでハンデではなく強みになることができる。

ADHDの人は活動的で行動力があり、興味を持ったことにはすぐに飛びつく特性があり、成功につながることがある。

ASDの人は集中力が高く、記憶力に優れ、感覚過敏な傾向があるため、研究や芸術分野での活躍が可能である。

ニトリの創業者もADHDとの診断を受けたそう。うまく生かせば、発達障害は大変な長所となり実を結ぶ

 ADHDには活動的な人が多く、ASDには根気の必要な繰り返し作業が適しているという。発達障害といえども、それぞれの特性を生かせば、それはハンデではなく、強みになる。精神科医・岩瀬利郎氏の著書から成功例を紹介する。

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■ADHDは実業家向き

■ASDは職人や研究支援

 ここに紹介したように、ADHDの人も、ASDの人も、それぞれに特性を強みに変えていくことができます。発達障害の人というのは、その特性を上手に引き出せれば、定型発達の人と同等もしくはそれ以上の能力を発揮できる、大きな可能性を秘めた人たちなのです。

 

■発達障害のおかげで成功できた

 たとえば、ニトリホールディングス代表取締役会長の似鳥昭雄さんは、70歳を過ぎてからADHDとの診断を受けたといいます。子どもの頃から注意散漫で、人の話が聞けず、整理整頓も苦手なうえに、忘れ物の名人。小学4年生まで、自分の名前を漢字で書けなかったのだとか。

 大人になってからも相当なご苦労をされたようですが、ある取材記事で、「発達障害のおかげで、私は成功できた」と仰っていたのが印象的でした。ADHDの特性である、興味のおもむくことにパッと飛びついていける行動力や発想力が、ご自身の成功につながったと考えられているのかもしれません。

 もちろん、それらの特性は、経営者やクリエイターなどの職業だけでなく、一般的な職務でも強みになり得ます。思ったことを素直に口に出してしまう特性は、「裏表がない」「ウソがない」という信頼感につながることもありますし、ときに話があちこちに飛んでしまうことも、程度にもよりますが、「話し好きの楽しい人」と認識されることもあります。

 ADHDの人は、その特性によってトラブルになりやすい半面、明るく社交的で人から好かれやすく、ムードメーカーとなることも少なくないのです。

■空気を読まない存在も必要

 一方、ASDの人が見せる高い集中力は、データ分析などの専門性の高い職種で力を発揮することがあります。

 海外では、マイクロソフトなど大手IT企業も積極的に発達障害の人を採用し、ソフトウエア開発など、特性を活かした活躍の場を提供する試みが行われています。いずれ日本にも、この波がやってくるかもしれません。

 また、本を1回読んだだけで暗記できるなどのケースは特殊な例ですが、ASDの人の中には、記憶力に優れている人が少なくありません。この特性は、定型発達の人にはなかなか持つことのできない優位性にもなり得ます。

 些細な変化や違いがわかる感覚過敏傾向の人は、その特性が芸術面で発揮されることがあります。歴史上の画家の中には特定の色を好んで使った人もいますし、独特なノイズを取り入れる音楽家もいます。実際、後世に名を残す芸術家には、発達障害的な特性があったのではと思われる人も少なくないのです。

 理屈で納得しないと動かない傾向は、すなわち、「感情に流されず論理で考える」という長所ともとらえることができます。

 まだまだ空気の読み合いが重視される日本の社会では、「それを言うと〇〇さんが反対する」など忖度が働きそうなとき、俯瞰した立場で論理的に考えられる、この特性が活かされるはずです。何より、職場でも学校でも、一人くらいは、こうした〝空気を読まない〟存在が必要ではないでしょうか。

 発達障害の人は、決して能力が低いわけでも、人間性に問題があるわけでもありません。今後、社会が多様性を認める潮流をさらに強めていけば、〝見ている世界の違い〟は、より「個性」「強み」として発揮されやすくなっていくでしょう。