面接はわずか7分間で終了…カラオケボックスに60代は不要らしい【65歳アルバイトの現実】

AI要約

カラオケボックスでの65歳アルバイトの現実が描かれている。求人サイトを通じての面接では不親切な態度や透明人間扱い、マニュアル通りの対応が目立つ。採用の可能性が低いことを痛感する経験が語られている。

面接時には履歴書不要でタブレットへの入力が求められ、熱意の欠如や人手不足の実情が浮き彫りになる。60代の採用事例が少ない業界の現状が垣間見える。

面接時間は短く、途中での質問制限や早めの終了、採用の見込みの低さが示唆される。自虐的な声が胸に響き、採用の連絡が来なかったことで気付かされる現実に直面する。

面接はわずか7分間で終了…カラオケボックスに60代は不要らしい【65歳アルバイトの現実】

【65歳アルバイトの現実】#21

 カラオケボックス編

  ◇  ◇  ◇

「とりつく島もない」という言葉がある。「相手を顧みる態度が見られないこと」の意味だ。大手カラオケボックスの面接がそうだった。

 初めから不吉な予感がしていた。求人サイトを通じて応募したところ「該当店舗の担当者から電話させていただきます」とのメッセージが届いた。

 2日後、江島(仮名)という店長から電話がきた。面接日の打ち合わせをするのだろうと思ったら、さにあらず。「面接をご希望なら、改めてサイトから申し込んでください」という。どこか事務的な口調。というより「面倒くさい」という印象だ。求人サイトから2度も申し込みをさせるとは礼を失している。

 そこで考えた。人手不足の折、本部の採用担当部署が応募者の面接を江島氏に指示し、江島氏は「本部の指示だから仕方ない」と嫌々ながら私に電話したのではないか。そもそもカラオケボックスは若者が働く場だ。60代の私が採用される可能性は低い……。

■「履歴書不要」のワケ

 思案しているうちに面接日を迎えた。予感は的中した。店に入ると数人の男女が働いている。全員が推定20代。「面接に伺いました」と声をかけた女性は高校生に見える。

 10分ほど待つと江島氏が出勤してきた。スタッフから応募者が来ていることを聞き、こちらをちらりと見た。目が合ったので私はぺこりと頭を下げたが、江島氏は反応なし。どうやら私は透明人間らしい。

 まもなく江島氏の案内でカラオケボックスの個室に通された。事前に「面接に履歴書は不要」との連絡を受けていたのでどういうことかと思ったら、用意されたタブレットに学歴や職歴を入力するよう指示された。かなり面倒だ。しかもタブレットで顔写真も撮れという。

 入力が終わると江島氏が再び登場。お笑いの有田哲平に似た江島氏は声が大きく、滑舌もいい。

「ご希望の勤務日は何曜日?」「いつから働けますか?」と質問してくる。だが、熱意は感じられない。マニュアルを読んでいるようだ。

 私にあれこれ聞いたあと「何か質問はありますか?」と言うので、「どんな仕事ですか?」と尋ねると、「調理場か料理を運ぶ仕事。あるいは受付。入ってから決めます」。

「60代で働いている人はいますか?」

「うちにはいませんが、他の支店にはいるんじゃないかなぁ……」

 と天井を見ながら答える。心ここにあらずという雰囲気だ。

「実際に60代で採用された事例はありますか?」

「え~っと、あると思いますよぉ」

「60代を面接するということは、カラオケ業界は人手不足なんですか?」

 江島氏は「まあそうですね」とうなずいたあと、「面接関係の質問以外は受け付けません」とキッパリ。私が口ごもると、「採用の場合は連絡します。忘れ物のないようお帰りください」と追い出しにかかる。

「週に何時間働けますか?」「料理などは何種類?」と食い下がったが、「そうしたことは採用が決まってから聞いてください。お忘れ物のないように」。

 江島氏は決然と私のカバンを指さした。事前の連絡には「面接は15~30分」と記載されていたが、わずか7分で終了。見送りも受けず私は店を出た。

「カラオケボックスが65歳のオッサンを雇うはずないよなぁ」

 自嘲めいた声が私の胸に大きくこだました。採用の連絡が来なかったことは言うまでもない。

(林山翔平)