登山者のための火山のリスクヘッジ【vol.01 現在日本にある火山と登山リスク編】

AI要約

日本は火山大国であり、活火山が111座存在している。火山は富士山を含む観光名所であり、登山者にとって魅力的な存在であるが、噴火リスクもある。

2014年の御嶽山の噴火では63名の登山者が犠牲になる事故が起き、火口から遠く離れた建物や岩陰に身を隠していた人たちが助かったことが明らかになった。

噴火警戒レベルが低い状況でも突然の噴火が起こることがあり、登山者は常に火山のリスクに注意する必要がある。

登山者のための火山のリスクヘッジ【vol.01  現在日本にある火山と登山リスク編】

国土の約70%が山地という日本。4つのプレートがせめぎ合う場所にある国土は、〝地震大国〟であると同時に、〝火山大国〟でもあります。富士山をはじめ、登山者に人気の高い名山にも火山が多く含まれています。登山中に、もしも噴火に遭遇したら……!?

その山が火山かどうかなど、ほとんど認識しないまま、けっこう多くの火山に登ってきた筆者。今回、「火山のリスク」について、火山学・地質学の専門家で、『日本の火山に登る 火山学者が教えるおもしろさ』(山と渓谷社・ヤマケイ新書,2020年)を上梓された及川輝樹先生に教えていただきました。

気象庁の定義によると、「活火山」とは、過去1万年以内に噴火した火山や、現在も活発に活動している火山のこと。現在日本には111座の活火山がありますが、これは世界中の活火山の約7%だそうです。こんなに狭い国土にそれほど多くの火山があるなんて……。

「日本は世界でも有数の火山活動が活発な地域です。深田久弥『日本百名山』では、51座が火山、そのうちの33座が活火山です。火山は富士山を筆頭に、美しい姿をしているものが多く、噴火によって形作られた独特の地形や滝、植生、そして温泉など、火山だからこその魅力も多いんですよ」と及川先生。

「噴気孔や火口、温泉など、火山の活動を実感できる場も多く、いろいろな火山に登れるというのは、他国ではあまりない、日本の山の大きな魅力ではないでしょうか」。

たしかに、蒸気を噴き上げている噴気孔や、ブクブクと湧き上がっている温泉など、大地が生きていることを目の当たりにする体験は、貴重なものかもしれません。けれど、63名もの登山者が帰らぬ人となった、2014年の御嶽山の噴火のことを思い出すと、やはり恐ろしい気がします。

2014年9月27日、絶好の秋晴れで、登山日和となった土曜日の昼前。多くの登山者が御嶽山の山頂付近で休憩したり、昼食タイムを楽しんでいました。

11時52分。突然、地獄谷から噴煙が上がりました。何が起きたのかわからず、噴煙にカメラを向ける人も多くいたようです。数秒後、大小さまざまな噴石が降り始め、噴煙に覆われた場所では視界も失われました。

「御嶽山最高峰の剣ヶ峰付近では、33名の犠牲者が出ました。後で調べたところ、山小屋やトイレなどの建物に避難できた80名は助かっています。たとえ木造の小屋であっても、噴石を防ぐことができたんです」と及川先生。

犠牲者が出たのは、火口から700mの範囲。火口から近い場所にいて、建物や岩陰に身を隠すことができなかった人たちが噴石に当たってケガをしたり、命を失いました。

このとき、気象庁が発表していた噴火警戒レベルは「1」で、当時の表現では「平常」でした。登山者にとっては、まさに「青天の霹靂」だったのです。