『竹田くん』だけじゃない…「ヤバすぎる医者」に看護師は何も言えず、病院は全力で擁護する「この国の医療の現実」

AI要約

医師の免罪符となる医師免許により、才能がない医師が患者を傷つけ続ける現状が描かれる。

特定の医師を取材したネット上のマンガが、手術ミスを描き社会に議論を巻き起こしている。

患者が身を守るためには、医師の過ちや病院の問題に対して警戒し、情報を得る必要がある。

『竹田くん』だけじゃない…「ヤバすぎる医者」に看護師は何も言えず、病院は全力で擁護する「この国の医療の現実」

 誰が言ったか「最強の免罪符」。多くの人を傷つけ過ちをくり返す者でも、医師の肩書さえ持っていれば野放しにされるのが、この国の現状だ。何も知らない患者が、身を守る術はあるのだろうか。

 「医は仁術なり」の言葉で知られる江戸時代の儒者・貝原益軒は、『養生考』でこのように説いた。

 〈医術の巧拙は人の生死にかかわる。賢く才能ある者だけを医者とせよ。才なき者は自ら早めに判断して、医者になるのを止めよ。さもなければ多くの人を傷つけ、重い罪を犯すことになる〉

 ところが令和の今、少なからぬ「才なき者」が医師免許という印籠を手にして、人を傷つけ続けている。しかも、それが患者に露見したり、公に罰せられたりすることはめったにないのだ。

 東京都内の某総合病院内科に勤める30代の女性看護師は、気をもむ毎日を送っている。

 「私の科では、よく肝臓や腎臓の嚢胞(中に液が溜まった袋のような病変)の検査をやります。麻酔をかけ、内臓に針を刺して組織を取るのですが、嚢胞ががん化している場合もあるので、慎重に、かつ侵襲(傷)を最小限に進めないといけない。

 それなのに、いつもうちの先生は『え~っと、どこに刺すんだっけ? 』『ここでいいの? 』などと患者さんにも聞こえる大声で言いながら、モタモタと30分以上も迷っているのです。がん細胞が体内で飛び散ってしまうんじゃないかと、気が気ではありません」

 命に関わる手術ミスを連発する医者を描き、世に激震をもたらしているネット上のマンガ『脳外科医 竹田くん』。そのモデルとされる医師・A氏について、これまで本誌は取材を続けてきた。A氏の直近の動向は特集後半で触れるが、本誌の過去の記事には、こんな声が多く寄せられている。

 〈こんな医者がいるなんて、信じられない〉

 〈作り話であってほしい〉

 だがもちろん、A氏は実在の医師であり、今も大阪府の吹田徳洲会病院で勤務を続けている。加えて同病院は、A氏に間近で接する職員の告発や、病院の内部報告書という証拠に基づく本誌報道に対し、〈的外れで、事実を捻じ曲げ、悪い評判を煽るだけ〉と述べて、A氏を徹底的に擁護する構えを見せているのだ。

 「ヤバい医者」は決してフィクションの中の存在ではない。医者の指示にただ従っていては、命を落とすおそれがある。そして、いざ事故が起きたとき、多くの病院は被害者を一顧だにせず保身に走る。患者が身を守るには、こうした残酷な事実を肝に銘じることから始めねばならない。

 事実、日本では過去にも「手術の必要がない人に、ムリヤリ手術を受けさせる」という異常な行為を繰り返していた医師がいた。後編記事〈【病院の闇】生活保護者をムリヤリ入院させ、手術しまくる…医療界を震撼させた「山本病院事件」をご存じか〉でその恐ろしい顛末をお伝えする。

 「週刊現代」2024年6月1日号より