Amazon、ネット通販鈍化も広告急成長 そのワケとは

AI要約

米アマゾンの広告事業が急成長しており、売上高は20%増加している。

広告事業の成功要因には、購買意欲の高い顧客基盤、効果測定機能、広告掲載枠の拡大がある。

リテールメディア市場が活況で、広告収入は順調に伸びている。

 米アマゾン・ドット・コムのネット広告事業が急成長している。その2024年4~6月期における売上高は127億7100万ドル(約1兆8500億円)で、前年同期から20%増加した。これに対し、直営ネット通販の売上高は5%増にとどまった。主力電子商取引(EC)の成長が鈍化するなか、同社はEC以外の事業に注力することで、収益源の多角化を図っている。

 同社広告事業の四半期売上高が初めて100億ドルの大台を突破したのは22年10~12月期だった。続く23年1~3月期は95億ドルと、大台を割り込んだが、その後は回復し、24年4~6月期は5四半期連続の100億ドル超えとなった。

■ 広告急成長の3つの理由

 こうしてアマゾンの広告事業が成長している背景には、3つの要因があると、米調査会社のイーマーケターは分析している。(1)購買意欲を持った大規模な顧客基盤、(2)強力な広告効果測定機能、(3)拡大する広告掲載枠、である。

 1. 購買意欲を持った大規模な顧客基盤

 アマゾンの広告事業が成功している理由の1つとして、同社の顧客が持つ高い購買意欲と、その意欲に関する豊富なデータが挙げられる。アマゾンはこのデータに基づき、広告主に対して、効果的なターゲティング(追跡型)広告を提供することが可能であり、これが同社広告事業の収益向上に寄与している。

 2. 強力な広告効果測定機能

 イーマーケターによると、アマゾンの広告プラットフォームは広告効果の測定という点で優れており、広告主から高い評価を得ている。広告効果を正確に測定できることは、広告主にとって非常に重要な要素であり、アマゾン広告事業の成長を後押しする大きな要因の1つとなっている。

 3. 拡大する広告掲載枠

 3つ目の理由として、会員向けの動画配信サービス「Prime Video」など、新たな広告掲載枠の拡大が挙げられる。これにより、同社はより多くの広告収益を得るだけでなく、得られたデータを顧客情報に紐付けることで、より精度の高いターゲティング広告を配信できるようになり、結果として広告事業全体の成長につながるという好循環を生み出している。

■ 活況を呈す「リテールメディア」

 小売企業が自社のウェブサイトやアプリなど自社プラットフォームで展開する広告媒体「リテールメディア」が活況を呈している。英広告会社WPP傘下グループエムのリポートによると、リテールメディアの世界広告収入は今後も順調に伸び、28年にはテレビの広告収入(コネクテッドテレビ=ネット接続して動画配信を利用するテレビを含む)を上回る見通しだ。

 リテールメディアは24年に前年比17.5%増、25年に13.5%増で推移すると予測する。リテールメディアの伸び率はデジタル広告の中で最も高い。

■ 「ファーストパーティーデータ」を利用

 広告主にとっては、出稿先を多様化できるというメリットがある。ネット広告市場では、米グーグルと米メタが先行しており、この2社による「複占」状態が続いている。これに対し、リテールメディアでは、小売業者が自社サイトで独自に収集した購買履歴などの「ファーストパーティーデータ」を利用する。広告主にとってはプライバシー侵害へのリスクを回避しながら、効果の高い広告を出せるというメリットがある。

 ただしイーマーケターは、「アマゾンにとって主力のEC事業とリテールメディアは密接に結びついており、機会と同時に課題ももたらす」と指摘する。EC事業の成長鈍化が長引けば、リテールメディアの収益を伸ばすことが困難になるという。