「Galaxy Z Fold6」レビュー(前編)--デザインの変化、AI新機能の使い勝手

AI要約

サムスンの新しい折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold6」は、普通のスマートフォンの使い勝手を本当に再現しつつ、優れたタブレットとしても使えるデバイスとして進化している。

Galaxy Z Fold6はデザイン、ディスプレイの改良が際立ち、価格が高額になった点が挙げられる。しかし、外観や操作性の向上により、普通のスマートフォンとしての使い勝手が大幅に向上している。

新機能やAI技術の導入も進んでおり、特にAIスケッチやポートレートスタジオなどの機能が楽しいが、折りたたみスマートフォンならではの画面活用にはさらなる進化が望まれる。

「Galaxy Z Fold6」レビュー(前編)--デザインの変化、AI新機能の使い勝手

 サムスンは「Galaxy Z Fold6」でついに、普通のスマートフォンの使い勝手を本当に再現しつつ、優れたタブレットとしても使える折りたたみデバイスを作るというゴールにたどり着いた。本のように開けるサムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」シリーズは、初代が発売されてから約5年で、ずっと軽く、スリムになり、耐久性も上がり、スマートフォンとして自然に使えるようになった。これはつまらないことのようにも思えるが、必要な改良だった。

 Galazy Z Fold6の新しいデザインは明らかに「Galaxy S24 Ultra」に倣ったもので、これは今回の改良点の中で最も驚くべき部分でもある。それに加え、AI使用した新しいソフトウェアの機能や、暗い場所での写真撮影を改善する超広角カメラセンサー、Galaxy S24シリーズと同等の新たなプロセッサーも採用された。

 残念ながらそれには代償もある。具体的に言えば、1899.99ドル(日本では税込24万9800円)という価格だ。これまでも十分に高額だったGalaxy Z Foldシリーズは、2023年よりもさらに100ドル値上げされ、非常に高級なモデルになってしまった。作りが洗練されたことは一歩前進だが、価格の上昇は一歩後退にも感じられてしまう。サムスンがこの数年、新しいヒンジの採用や軽量化を価格の引き上げなしで実現してきたことも、そう感じる一因になっている。

 Galaxy Z Fold6を使うのは楽しく、一度これを経験してしまうと、普通のスマートフォンに戻るのは難しいと思ってしまうかもしれない。一方でこのデバイスは、筆者がタブレット志向の折りたたみスマートフォンに求めている2つの重要な要求に応えていない。それは、もっと手頃な価格と、デュアルスクリーンを生かした画期的なソフトウェアだ。むしろこのモデルは、デザインやカメラの品質の面で、折りたたみスマートフォンを普通のスマートフォンと同じ水準に引き上げることに重点を置いた、大きな飛躍よりも着実な進歩を目指したものに見える。

Galaxy Z Fold6のデザインとディスプレイ

 閉じた状態のGalaxy Z Fold6は、何も問題なく普通のスマートフォンとして使うことができる。今回はカバー画面が少し大きくなったほか(Z Fold5では6.2インチだったのに対して、6.3インチになった)、画面の外縁部分も以前より左右対称に近づいた。筐体の角はよりシャープになって、全体に角張った外見になり、「Galaxy S24 Ultra」にかなり似たものになった。

 これらの変更によって、閉じたGalaxy Z Fold6の見た目は、「折りたたみスマホのカバー画面」から「普通のスマートフォン」にかなり近くなった。これは見た目だけの話ではなく、エッジが平らになったことで持ちやすくなり、ディスプレイが広くなったため、閉じた状態で写真を撮る際に見える画面も広くなった。その上、Galaxy Z Fold6は先代モデルより約14g軽くなっており、その違いは手に持った瞬間にはっきりと分かる。また、以前のモデルとは違ってIP48の認証を受けているため、防水機能に加えて、破片などの異物からの保護もある程度期待できるようになった。

 これらの改良は、サムスンが1800ドル(日本では税込25万3000円)の「Google Pixel Fold」や、1700ドル(約26万5000円)の「OnePlus Open」と戦うために必要なものだった。これらの競合機種は、どちらもGalaxy Z Fold5よりも大きな外部ディスプレイを持ち、閉じた状態でも操作しやすかったからだ。筆者はこれまで、Z Foldシリーズよりも閉じた状態の画面幅が広いPixel Foldの方が好きだったが、Z Fold6は、スマートフォンと同様の使い勝手を損なわない画面幅と、横幅が大きすぎるとは感じさせない優れたバランスをうまく両立していると感じる。

 内側にあるタブレットサイズのメインディスプレイは、従来と同じ7.6インチだ。ディスプレイの層が1つ追加され、ヒンジの耐久性が向上したことで、折り目は以前よりも多少目立たなくなった。また、角が以前よりシャープになったことで、1枚の紙や電子書籍リーダーのようなすっきりとした無駄のないデザインに見える。

 Galaxy Z Fold6の広々とした画面は、パリ市内を歩き回りながら「Googleマップ」を見たり、撮影した写真を確認したりするのに便利だった。筆者は通常、メインディスプレイを1つのアプリで使うことが多いのだが、旅行中は分割画面モードが驚くほど有効で、特に「WhatsApp」のチャットでレストランのおすすめ情報を見ながら、その情報をアプリを切り替えずに直接Googleマップに入力するのに重宝した。

Galazy Z Fold6のAIとソフトウェアの機能

 IT企業の例に漏れず、サムスンも生成AIに力を入れており、この技術を同社にとって重要な製品に組み込む新しい方法を模索している。

 その最新の例がGalazy Z Fold6と「Galaxy Z Flip6」で、自撮り写真をさまざまなスタイルの画像に変換する機能や、手描きの絵から画像を生成する機能、Z Foldの2つの画面を同時に使って、会話の内容を双方向に翻訳したりする機能などが新たに導入された。当然、写真の中にある物体を消去したり、メモを要約したり、通話の会話をリアルタイムで翻訳したり、画面上のものを丸で囲むだけでGoogle検索を実行したりといった従来からあるAI機能も引き続き使える。

 人物の写真をさまざまなスタイルの画像に加工する「ポートレートスタジオ」は、使っていて楽しい機能だ。筆者は、サムスンが自分の写真をどんな風にアレンジするのかとワクワクしながら、自分の自撮り写真を3Dアニメ風の画像や、水彩画風の画像、手描き風の画像などに変換してみた。その結果、ある程度正確で実物よりもよくなったケースもあれば、私だと認識できないほど変わってしまったケースもあった。例えばアニメ風の画像では、筆者の目が茶色から青に変えられてしまった。

 別の新機能である「AIスケッチ」は、その名前からもイメージできるように、手描きの絵に基づいて特定のスタイルの画像を生成するというものだ。筆者は絵が下手なので、描いた絵を改善してもらえるのはありがたい。ポートレートスタジオと同じく、AIスケッチもその出力の出来にはムラがあったが、試してみるのはとても楽しかった。

 その結果には感心させられることもあり、筆者の簡単な絵を、水彩画風のエッフェル塔の画像に変えてしまったケースなどは素晴らしいと感じた。出力された画像に驚かされたこともあり、筆者が簡単な棒人間の絵を描いたときなどは、Tim Burton監督の映画に出てきそうな人物が出力された。

 いずれにせよ、AIスケッチやポートレートスタジオは使っていて楽しいのだが、自分がこれらを日常的に使うところは想像しにくい。一方、プロンプトに従ってメッセージアプリやソーシャルメディアの文章を生成できる「文章の生成」機能は、理屈の上ではもっと普段使いできそうに思える。ところが今のところ、この機能は、友人のメッセージへの返信を作る場合でも、Instagram向けのキャプションを作ろうとする場合でも、キーワードが異なるだけで、非常に似た感じの文章しか作ってくれない。

 筆者が本当に求めているのは、Galaxy Z Foldが2つの画面を持っていることを生かした新機能だ。その意味では、サムスンの「通訳」アプリに新たに導入された会話モードは正しい方向に進んでいると言える。このモードでは、会話の参加者双方が簡単に同時に翻訳結果を見られるように、外側のカバー画面と内側のメインディスプレイに、翻訳されたテキストが同時に表示される。

 この方法でアプリを使うには、デバイスをフレックスモード(途中まで折り曲げた状態)にする必要があるのだが、その状態にしても会話モードが自動的に起動されるわけではない。そのためにはまず画面上部の小さなボタンを押す必要があるのだが、最初はそれがよく分からなかった。

 筆者は、この機能を試してみるのに絶好の場所として、パリの賑やかな食品市場であるマルシェ・デ・ザンファン・ルージュを思いついた。ところが、Galaxy Z Fold6をフレックスモードで持ち、実際に混雑した屋台でランチを注文する際に使ってみると、画面を見て自分の言葉が正しく伝わっているかを確認するのに忙しくて、会話に集中するのは難しいことが分かった。しかも、市場は非常に混雑していたため、通訳アプリはずっと周囲の買い物客の言葉を拾い続けていた。

 このコンセプトは非常に素晴らしいと思うのだが、身振り手振りや指さしをしながら、自分が知っている数少ないフランス語を使って注文する方が、Galaxy Z Fold6を使うよりも簡単だったと言わざるを得ない。この会話モードは、タクシー運転手とのやりとりのような、あまり周囲に雑音がない限定された場面でしか使えないように思える。言うまでもないことだが、この機能は特に目新しいものではない。Googleは過去に、Pixel Foldで同様の翻訳ツールをリリースしている。

 これらのAI機能は、うまくはまったときには非常に素晴らしいのだが、筆者はZ Foldシリーズの形状を生かした機能をもっと見たかった。サムスンは、AIスケッチやポートレートスタジオなどの機能がGalaxy Sシリーズでも提供されるかどうかについて明らかにしていないが、できない理由は見当たらない。つまり、折りたたみ式のディスプレイがどうしても必要な新機能は、通訳アプリの会話モードしかなかったことになる。しかも、これらの機能には特に新規性は感じられない。例えばAppleは最近、「iPhone」の次期モデルで、手描きの絵を元に画像を生成する機能を提供すると述べている。

 むしろ筆者は、サムスンにカバー画面をうまく生かせる独創的な使い方を見つけてほしいと思っている。例えば、Galaxy Z Fold6の優れている点の1つは、まるでスタンドが組み込まれているように立てて使えることだ。筐体を途中まで折り曲げてテントのような形で立てれば、その状態で「YouTube」の動画を見たり、「Spotify」で音楽を聴いたりできる。

 サムスンは、Galaxy Z Fold6のその点にもっと注目すべきだろう。エンターテインメント用のアプリに、フレックスモード用の特別なウィジェットやインターフェースを用意してはどうだろうか。フレックスモード用に、ホーム画面の横向き表示を最適化するのもいいかもしれない。しかし筆者が本当に期待しているのは、Appleのスタンバイモードのサムスン版だ。スタンバイモードは、iPhoneを横向きにした状態で充電機に繋ぐと、小さなスマートディスプレイとして使えるというもので、Galaxy Z Fold6にも当然この種の機能があるべきだろう。

 将来のアップデートでは、Galaxy Z Fold6のマルチウィンドウモードで、Googleの「Gemini」をオーバーレイ(ポップアップするミニウィンドウ)で使えるようになる予定だが、これは正しい方向への一歩だ。

 後編に続く。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。