あなたのOBSの基本設定、最適化されていますか?

AI要約

 記事は、PC Watch編集長が配信関連の技術や機材に興味を持ち、OBSの基本設定から高度な設定、プラグインの使い方、オススメ機材まで解説する連載を始めたことを紹介。

 1回目のテーマはOBSの基本設定で、配信プラットフォームの設定、画面解像度の設定、エンコードの設定などを丁寧に解説。

 最後には、OSの設定も見直すポイントが紹介されており、次回の記事ではOBSのシーンやソースの設定方法が紹介される予定。

あなたのOBSの基本設定、最適化されていますか?

 こんにちは、PC Watch編集長の若杉です。かつて、PC界隈で4K解像度の対応製品が出始めたとき「4K修行僧」として、あれこれ買ったり、試したりをしていた。今では4Kは、物珍しいものではなくなった。他方、個人的にここ数年、配信関連の技術や機材に興味があり、やはり、あれこれ買ったり、試したりをしている。そのように「配信修行僧」として培った配信関連の知見を連載にまとめてみることにした。

 現在、自分の個人配信では下記の動画のような画面構成で行なっている。カメラの画面をパンさせたり、ゲーム画面をズームして回転させたり、音声認識でOBSを操作したりと、手前味噌ながら、ほかでは見かけないような映像になっているだろう。また、カメラの画質についても、照明などを工夫して、シネマチックに仕上げている。映像のプロでなくても、個人配信でこういったことができる時代になったのだ。

 機材については、いろいろなメーカーの物を取り上げるが、配信ソフトについては、基本的にOBS Studio(以下、OBS)に限定する。理由としては、無料である、多くの人が使っている、さまざまな機能拡張を行なうためのプラグインが充実しているなどがある。ただ、定番ではあるものの、多機能すぎて分かりにくいところがあるのも事実だろう。

 と言うことで、この連載では、OBSの基本的な使い方から、より便利/高度な設定、一歩先行くプラグインの使い方、そして配信向けのオススメ機材などについて解説、紹介していく。なお、基本的にこの連載での「配信」は、自分がそうであるように、「顔出しでのゲーム配信」を意味する。とは言え、顔を出さない人やVTuber、逆に雑談のみでゲームはしない配信者にとっても参考になるだろう。

 連載の1回目のテーマはOBSの基本設定だ。実はOBSの初期設定は必ずしも画質/音質が高い設定にはなっていない。また、使い勝手の面でも最善ではない。これからOBSをインストールする人も、すでに使っている人にも参考にしてほしい。なお、本稿ではOBSバージョン30.1.2を利用しているが、基本的にはバージョン28以降なら内容は当てはまる。

■ 配信プラットフォームの設定

 初めてOBSを起動すると、「自動構成ウィザード」が起動し、内容を選択すると初期設定を行なってくれるが、これは「キャンセル」して閉じてしまっていい。

 配信をするにあたって必要なのは、配信プラットフォームのアカウントの登録だ。OBSの「ファイル」→「設定」→「配信」をクリックする。サービスから自分が利用するものを選ぶが、Twitch、YouTube、Facebook Live、Restream.io、Twitter(X)については、選択肢が用意されている。たとえばInstagramなど、それら以外を利用する場合は「カスタム」を選び、自分でサーバーとストリームキーを登録する必要がある。

 TwitchやYouTubeでも、ストリームキーを使用することもできるが、「アカウント接続(推奨)」が手っ取り早い。また、「アカウント接続」すると、OBSにチャットや配信情報などをドックとして追加表示できる。別途ブラウザでチャット画面を出さなくていいので便利だ。「アカウント接続」ボタンを押して出てきた画面に、自分のユーザー名とパスワードを入力する。

 本題からはそれるが、配信プラットフォームのアカウントは2段階認証を有効にするようにしよう。ユーザー名とパスワードだけだと、乗っ取られる可能性が高まるからだ。

 ゲームの配信プラットフォームでは、TwitchとYouTubeが特に人気だが、2023年末にTwitchが他のプラットフォームとの同時配信を解禁した。しかし、OBSの標準機能では、複数のプラットフォームに同時配信できない。これをやるには別途プラグインをインストールする必要がある。こういった応用的な方法については、回を改めて解説していく。

■ 画面解像度の設定

 次に「設定」の「映像」をクリックする。「基本(キャンパス)解像度」はモニターの解像度と捉えていいので、基本的にはモニターと同じ解像度にしよう。「出力(スケーリング)解像度」は、配信に送出する解像度だ。ここはデフォルトで「1280x720」となっている。フルHDが基本となっている昨今、このままだと配信が低解像度になってしまう。

 Twitchの場合は、最大となる「1920x1080」(フルHD)でいいだろう。モニターが4Kで、YouTube Liveを使う場合は、基本解像度、出力解像度とも4K(3840x2160)にしてもいい。ただし、4Kにするとゲーム自体も重くなるし、配信に必要な帯域も大きくなる。特別な理由がなければ、YouTubeでも「1920x1080」でいいと思う。

 「FPS共通値」はデフォルトだと「30」だ。ゲームにもよるが、30fpsだとカクついてしまうので、「60」にしよう。

 ところで、配信の画質は、解像度とフレームレート(fps)だけでなく、エンコードのビットレートにも大きく左右される。解像度を上げても、ビットレートが低いと、映像は圧縮によるブロックノイズで見にくくなってしまう。

 しかし、ビットレートはいくらでも上げられるわけではない。特にTwitchだと、基本の上限は6,000kbpsだ。ビットレートが同じなら、解像度を下げた方が、ブロックノイズは減るため、画質が上がるという考え方もある。これについては、簡単に検証した限りでは、解像度を1,664×936ドットに落としても、ブロックノイズの影響に差は見られなかった。むしろ、1,664×936ドットから1,920×1,080ドットに引き伸ばすことで、ややぼやけてしまうことの方が気になった。

 この辺りは好みの問題もあるし、どれだけ自分がやるゲームが激しく画面をかきかえるかによっても変わってくるが、個人的には基本解像度/出力解像度とも「1920x1080」をオススメする。

■ エンコードの設定

 前述したエンコードについては、「設定」→「出力」で設定する。ここはデフォルトでは、「映像ビットレート」が「2500kbps」になっている。これは、フルHD/60fpsで配信するには低すぎる。Twitchでは、6,000kbpsが推奨かつ基本的な上限となっている。YouTubeでは、12,000kbpsが推奨となっている。

 TwitchはYouTubeに比べると大分上限が低いのだが、実はTwitchアフィリエイトかパートナーの場合、「設定」→「配信」にある「配信サービスの推奨設定値を無視する」にチェックを入れると、8,000kbpsまで引き上げることができる。これ以上にすると映像が出なくなるので注意しよう。

 少し話しが前後するが、「配信」→「出力」の「出力モード」はデフォルトで「基本」になっている。これは「詳細」に変更しよう。するといくつかのタブが表示される。

 「配信」タブの中で「映像エンコーダ」はデフォルトで「x264」になっている。これはCPUでエンコードすることを意味する。ハイエンドCPUなら、フルHD程度のエンコードはできるが、ゲーム配信ではCPUリソースはなるべくゲームに使わせたい。GPUにはハードウェアエンコーダが搭載されているので、これを使わない手はない。

 自分が使っているGPUがGeForceなら「NVIDIA NVENC H.264」を、Radeonなら「AMD HW H.264」を選ぶ。ちなみに、GPUを内蔵したCPUを使っている場合、そのハードウェアエンコーダを使うこともできる。インテルCPUなら「QuickSync H.264」を選ぶ。Ryzenについても「AMD HW H.264」が利用できる。基本的にはGPUに内蔵されたものを使えばいいが、OBSで高度な処理を行なう場合、そちらにGPUリソースを食われることがあるので、そういったときにCPU内蔵のハードウェアエンコーダを使うことができるくらいに覚えておこう。

 下の「エンコーダ設定」では、先に書いた通り、「ビットレート」をプラットフォームにあわせて設定する。それ以外はデフォルトのままでいいだろう。ただし、「音声」タブを開くと、デフォルトの「音声ビットレート」が「160」(kbps)になっているので、「320」にしておこう。

■ その他の設定

 基本的にはここまでの設定である程度最適化されているが、これ以外にもデフォルトから変更した方がいい項目がいくつかあるので紹介しよう。

 「設定」の「一般」→「出力」にある、各種ダイアログ表示はオンにすると、間違って配信を開始したり停止するミスを防止できる。

 また、配信動画を後に切り抜き動画に編集して公開する人は「配信時に自動的に録画する」にチェックを入れて録画するといい。録画については、「設定」→「出力」の「録画」タブに設定がある。

 「録画ファイルのパス」で、ファイルをどこに保存するかを選ぶ。「映像エンコーダ」は「(配信エンコーダを使用)」でいい。「音声エンコーダ」もデフォルトの「FFmpeg AAC」のままでいい。

 「録画フォーマット」はデフォルトの「Matoroska Video(.mkv)」がオススメだ。と言うのも、MKVだと、万が一配信時にOBSがクラッシュするなどして録画が中断されても、そこまでの映像が記録されるからだ。通常のMP4ファイルだと、録画が中断されると全データがダメになってしまう。

 MKVファイルの場合、Premiereなど一部の動画編集ソフトで扱えないし、YouTubeは対応しているが動画サイトでは直接アップロードできない場合もあるかもしれない。これについては、「設定」→「詳細設定」の「録画」で、「自動的にmp4に最多重化する」にチェックを入れておくと、MP4ファイルも作成してくれる。自動的に再多重化しなくても、「ファイル」→「録画の再多重化」からファイルを選ぶと、後で個別にMP4ファイルを生成できる。なお、次期バージョンとなる30.2では、MP4でMKV的に保存できる「Hybrid MP4」がサポートされる。

■ OSの設定

 OBSの必要な設定はおおむね前述の通りだが、Windowsの設定も一部見直した方がいい場合がある。

 まず、「設定アプリ」の「システム」→「ディスプレイ」→「グラフィック」→「規定のグラフィック設定」について、OBSの推奨では「ハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリング」をオフにすべきとある。しかし、これをオフにすると、一部のゲームはフレームレートが大きく低下するのが悩ましい。

 あくまでも個人的体験では、「ハードウェアアクセラレータによるGPUスケジューリング」をオンにしたことでOBSがクラッシュしたり、配信が不安定になったことはない。ひとまずオンで運用してみて、もし配信やOBSになにか問題が出るようであれば、これをオフにしよう。

 それから、「設定アプリ」の「システム」→「サウンド」→「サウンドの詳細設定」で、サウンドを再生するデバイスの「プロパティ」を開き、「詳細」で、「規定の形式」が「48000Hz」になっているかを確認しよう。OBSのデフォルトは48kHzなので、OS側が44.1kHzになっていると、問題が発生する場合がある。

 Windows 10までは、OBSを管理者権限で起動した方がいいとされていた。しかし、Windows 11では、管理者権限で起動しなくても適切な優先度でOBSが処理されるので、これが原因でコマ落ちしたりすることはないようだ。むしろ、OBSの優先度が高すぎるとゲームのフレームレートが落ちることがある。ただ、一部のゲームにおいては、OBSに管理者権限がないとうまく画面キャプチャできないものがある。

 そういう時は、スタートメニューのOBSを右クリックし、管理者として実行を選ぶ。あるいは、「ファイルの場所を開く」を選び、OBS Studioのアイコンを右クリックして、「プロパティ」→「互換性」を開き「管理者としてこのプログラムを実行する」にチェックを入れると、毎回管理者権限で実行される。

 以上が、最適を目指したOBSとOSの基本設定だ。次回の記事では、OBSのシーンやソースの設定方法などを解説する。