「AI PCは、たまごっち」。よりパーソナルに、近くでユーザーを助ける存在へ ~インテル AI Summit Japanレポート

AI要約

インテル株式会社がAI領域におけるエコシステムを確立するために開催した「インテル AI Summit Japan」の内容を報告。

パネルディスカッションでは、AI PCの役割やクラウドとローカルの使い分け、vProプラットフォームの重要性、業務へのAI導入について議論。

参加者は、AI PCの可能性や業務への変化について意見交換し、ローカルでのAI活用やバッテリー消費対策などについて考察。

「AI PCは、たまごっち」。よりパーソナルに、近くでユーザーを助ける存在へ ~インテル AI Summit Japanレポート

 インテル株式会社は6月6日、AI領域におけるエコシステムを確立することを目的とした業界関係者対象のイベント「インテル AI Summit Japan」を都内で開催した。

 分科会セッションの中の「本音で語る、AI PC導入のポイント」では、インテルやマイクロソフトが提唱する「AI PC」によってビジネスパーソンの仕事が具体的にどのように変わっていくのかなどについてパネルディスカッション形式で語られた。

 パネリストは、インテルの上野晶子氏(執行役員 マーケティング本部 本部長)と坂本尊志氏(インダストリー事業本部 シニア・ソリューション・アーキテクト)、そしてITジャーナリストの三上洋氏。モデレーターは、株式会社メディアジーンの小林優多郎氏(Tech Insider編集チーフ)が務めた。

■ パーソナルコンピューターがパーソナルに戻ってきた

 1つ目のテーマは「AI時代のPCが担うべき役割」だ。

 まず上野氏は、「AI PCは『たまごっち』だと思っている」と発言した。同じものを買っても、それぞれ違うデータが貯まっていくことにより、それぞれの異なるように育っていくという意味だ。そして「パーソナルコンピューターがAIの時代でパーソナルに戻ってきたと感じている」と語った。

 ビジネスPCに長年携っており、PCマニアでもあると自己紹介した坂本氏は、仕事で出てくる「あのころのあれ」のような曖昧なことを思い出すのに時間がかかっていたことをPCがサポートしてくれると、おそらくWindowsのRecall機能を念頭に置いたと思われるポイントを回答。そして、「PCマニアとしても、ビジネスPCを見ている人間としても、わくわくする」と語った。

 一方、TV番組にも出演してコメントしている三上氏は、AIについて、情報流失や不正確性、詐欺・偽情報への悪用、著作権という懸念点がメディアで伝えられていることから、経営者が見送るという傾向を紹介。さらに、情報流出の懸念について、これまでセキュリティはできるだけシステムで対応してきたのに対し、生成AIでは「こういう内容は入力しない」というガイドラインで対応しているのが、怖いと思わせるのではないかと指摘した。

 この問題について上野氏は、AI PCによりPC上でAIが動くようになれば情報を外に出さなくてもよくなることや、(後で説明される)インテルvProプラットフォームのようなハードウェアでのセキュリティへの取り組みを紹介した。

■ まずはよく使うようなローカルでできる用途から

 2つ目のテーマは「クラウドとローカルをどう棲み分けるのか」だ。

 これについて三上氏は、ローカルでどこまでできるかはっきりしないのでまだ答えるのは難しいと前置きしつつ、文章を要約するような、よく使うような用途であればローカルでできるようになるだろうとして、ローカルでのAIはそうした使い方に進むのではないかと回答した。

 一方で坂本氏は、「コンピュートリソースを偏在させない」ことを挙げた。これまでコンピュータは、ホストと端末の形から、PCへ、またシンクライアントへ、それでWeb会議が難しいのでローカルへと、ホストとローカルの関係が変わってきた。こうした変化に柔軟に対応できることが重要だとして「われわれは、ユーザーさんに柔軟に使っていただく選択肢を提供する」と語った。

■ vProの機能がAIによってより重要に

 3つ目のテーマは「AI PC導入のポイント」だ。

 これについては坂本氏が、インテルvProプラットフォームを紹介した。氏はvProを、ビジネスPC最上位のブランドと説明。パフォーマンス、セキュリティ、管理性能(リモートの電源オフのPCでも管理)、安定性(安定の基準を設定)の4つを特徴として挙げた。

 そのうえで、この4つがAIによってさらに重要になってきたと強調。たとえばセキュリティの攻撃にも防御にもAIが使われるようになる中で、管理者に負担をかけずにシステム的に守る機能が必要だと語った。

 さらに上野氏は、AI PCでもvProのようにIntelの主力分野であるハードウェアに機能を内蔵していることが活用につながり、その上にパートナーがアプリケーションを積み上げていただきたいと語った。

■ AIをがんがん使ってもへこたれないPCを作っていきたい

 4つ目のテーマは「AI PCで業務は実際どう変わる?」だ。

 三上氏は「難しいことでなくていい、単純なところからでいい」と提案した。氏は別府市が市民の意見の概要作成やラベリングに生成AIを利用した成果を発表したことを例に挙げ、当たり前のことから始めることから未来が開けると語った。

 上野氏は、AIについて「自分が何をしたいか、何をしてくれるとうれしいか」という発想があれば用途が見えてくると説明。まずは小さいことでも使ってみることで、どういうことができるかが分かるようになると語った。

 坂本氏は、いちばん使われているAI技術としてZoomなどのWeb会議で背景を隠してくれる機能を挙げて、Web会議をしやすいことによってみんなの生産性が上がっていると述べた。そして、「われわれは、1日AIを使ってもバッテリーが持つような、AIをがんがん使ってもへこたれないPCを作っていきたい」と語った。