原作者・脚本家の板挟みになった日テレ 認識甘く契約書もなし 「セクシー田中さん」問題

AI要約

日本テレビが31日に公表した「セクシー田中さん」問題の調査報告書には、制作側と原作側の認識の違い、契約条件の欠如、脚本家と原作側の板挟み状況などが詳細に記されている。

報告書によると、制作側と原作側が原作改変に対する認識の違いから、脚本家の立場が難しくなったことや、契約書のない状態が問題を複雑化させたことが明らかにされている。

脚本家と原作側のやりとりがうまくいかず、番組制作が難航した経緯が報告され、書面でのコミュニケーションの重要性が強調されている。

原作者・脚本家の板挟みになった日テレ 認識甘く契約書もなし 「セクシー田中さん」問題

日本テレビが31日に公表した「セクシー田中さん」問題の調査報告書には、同局が原作改変に対する認識の違いから原作側と脚本家の間で板挟みとなり、身動きが取れなくなっていく様子が克明に記された。社内特別調査チームのメンバーで外部有識者として参加した国松崇弁護士は同日の説明会で、「契約があれば全て防げたわけではない」としつつ、事前に書面で契約条件などが示されなかったことが問題を複雑化させたとして、「説明が基本的に足りていなかった」と断じた。

■原作改変の認識に違い

報告書によると、制作がスタートした令和5年3月当初から、「必ず原作に忠実に」と考える芦原妃名子さん、小学館の原作側と、「ドラマ制作のプロである自分たちが提案し、よりよいドラマを作る」とする日テレなどの制作側とは、原作改変に対する認識に違いがあった。さらに同局は「オリジナル展開になる終盤は原作者が脚本を書くこともあり得る」とした芦原さんの条件を認識していなかったため、脚本家に伝えないまま執筆を依頼していた。

撮影開始後も、副主人公の解釈などをめぐって意見の食い違いが生じた。原作側から一部シーンの撮り直しを求められ、未撮影にもかかわらず同局が撮影済みと答えたことで、芦原さんは「制作サイドから何を言われても信用できない」と思うに至ったという。

出版社が芦原さんの意向を柔らかく伝えていたこともあって、かみ合わないやりとりが続く。さらに、脚本家が「芦原さんの要望に目を通すのがつらい」と内々で伝えたことが直接芦原さん本人に伝わってしまい、芦原さんは「脚本家が降板しないと地上波放送や2次使用を全て差し止める」と態度を硬化させた。

■契約書なしが影響も

一方で、脚本家は「青天の霹靂(へきれき)」と「驚愕」しつつ最後の9、10話の降板を受け入れたものの、「脚本協力」「監修」などで名前を出すよう要望。原作側に反対されたことで「1~8話の配信などの2次利用について、脚本家としての著作権を行使する」可能性を示唆した。

報告書では、この時点で双方と契約書を交わしていなかったことが「日本テレビの立ち位置を難しくした原因の一つ」であり、「原作者と脚本家の板挟み状態になってしまった」としている。調査チーム責任者の山田克也執行役員は「番組を意見を闘わせずに作ることは難しいが、こちらの思いを書面で伝えていくことは重要だ」などと話した。(三宅令)