ジャーナリストの徳岡孝夫さんと同級生の土井荘平さんが電子書籍刊行

AI要約

ジャーナリストの徳岡孝夫さん(94)と、同級生で元会社員の土井荘平さん(94)が、協力して電子書籍「同行二人―93歳のふたり言」を刊行した。

現役時代は商社に勤務するなどした土井さんは、退職後にエッセーなどを書くようになり、徳岡さんとは大阪の旧制北野中時代の同級生で再会し、共同作業を通じて原稿を執筆した。

徳岡さんと土井さんは、「百歳以前」から3年後にも再び本を準備し、高齢男性の日常や豊かな人生経験を記録している。

徳岡さんやり取りした面白いエピソードや、自身の経験を通じて示唆に富んだ内容も含まれており、読者に感動や共感を呼び起こす作品となっている。

土井さんは90歳を過ぎた男性が電子書籍を出版することへの意欲を語り、高齢者にも新たな挑戦の余地があることを示している。

記事には高齢者の視点からの生きることへの真摯な考察や、共同作業を通じた感謝の気持ちが表現されており、多くの読者に心に響くことであろう。

 ジャーナリストの徳岡孝夫さん(94)と、同級生で元会社員の土井荘平さん(94)が、協力して電子書籍「同行二人―93歳のふたり言」を刊行した。視力を失った徳岡さんの担当分は、土井さんが電話で聞き取り、原稿に起こした。

 現役時代は商社に勤務するなどした土井さんは、退職後にエッセーなどを書くようになった。徳岡さんとは大阪の旧制北野中時代の同級生で、60歳代で再会すると、意気投合。2021年には、毎日のように電話でやり取りし、土井さんが徳岡さんの話を原稿化しつつ、自分の原稿も執筆し、「百歳以前」(文芸春秋)を刊行した。反響に力を得て再び本を出すことを目指し、同じ手法で22年から23年にかけて24のエッセーを準備した。

 徳岡さんは、自決前の三島由紀夫が自身の前でとった行動の意味を推察したり、山崎豊子から聞いた周恩来との思い出を紹介したりした。親しかった英国人ジャーナリストの訃報(ふほう)を、彼の息子でタレントのハリー杉山さんのラジオ放送で聞いたことなども記した。一方、土井さんは、介護関係者らに抱くときめきや、うたた寝している間に見た夢の話など、高齢男性の一人暮らしの日常をつづった。2人が夜半に交わした電話のやり取りを記した1編もある。

 「百歳以前」から3年。徳岡さんは体力の衰えはあまり感じないというが、「言葉が出てこなくなった。年をとるとダメだね」と笑う。土井さんも「ずいぶん衰えたと感じる。終末が近いのは常に頭にある」と話す。それでも「土井君が助けてくれたので、言いたいことの何分の一かを残せた」(徳岡さん)、「共同作業が支えになっている」(土井さん)と互いに感謝する。

 土井さんは「90歳を過ぎた男性高齢者が書いた本は少ないのではないか。この年でもその気になれば、電子書籍だって出せるよと伝えたい」と話している。900円。(小林佑基)