明けても暮れても「大谷翔平」で毎日バカ騒ぎ…日本メディアにファンも辟易(元木昌彦)

AI要約

日本のメディアが大谷翔平に過剰な関心を寄せていることへの批判

大谷翔平や彼の伴侶に対する日本メディアの扱いの問題点

アメリカのメディアや専門家からの批判と、日本メディアの報道姿勢への問題提起

明けても暮れても「大谷翔平」で毎日バカ騒ぎ…日本メディアにファンも辟易(元木昌彦)

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

 この国のワイドショーやスポーツ紙は大谷翔平の追っかけ、チアリーダーに堕している。

 私が取っているスポニチを例にとれば、5月11日から21日(13日は休刊日)までの10日間で、大谷が1面を飾ったのが4回、パドレスのダルビッシュが2回、カブスの今永昇太が1回だった。日本のプロ野球界は「ないがしろにされている」となぜ怒らないのだろう。

 もっと酷いのはワイドショーである。中でも「モーニングショー」(テレビ朝日系)は大谷翔平専門チャンネル化している。

 昨シーズン終了後の移籍問題に始まり、ドジャース入団、今季の活躍予想、結婚発表と、この国の人間たちの関心は大谷にしかないと決め付け、呆れるほど長時間垂れ流した。

 もちろん、元通訳・水原一平の違法賭博事件も連日だった。独自取材もせず、新しい情報もないのに、「大谷さん可哀相」的視点からだけの皮相な番組作りは、私のような大谷ファンをもへきえきさせた。

 ついでにいわせてもらうと、自分の感想程度しかしゃべれない“ボキャ貧”コメンテーターたちを並べるのはやめたほうがいい。アンカーマンが務まる人材がいないための苦肉の策だとは思うが、政治・事件・芸能すべてに答えられる人間などいるわけはない。

 加えて、故・安倍晋三元首相にベッタリだった元時事通信記者やNHKの元記者を、裏金問題など政治問題の解説者として起用するべきではない。安倍の“悪政”を見て見ぬふりをし、甘い汁を吸った人間が自民党に石を投げる資格がないことは自明である。

■ニューヨークでは無名

 話がそれた。ワイドショーやスポーツ紙にジャーナリズムは求めないが、大谷といういちアスリートを神のごとくあがめ奉るのはいい加減にしてはどうか。水原事件で明らかになったように、大谷は被害者ではあるが、30億円近い大金を盗み取られていたことに気づかなかったのは、大谷の対人関係や資産管理方法にも問題があったはずである。

 大谷は超人的なアスリートではあるが、完璧な人間ではない。“人間”大谷翔平という視点からの掘り下げ方があってもいいと思うのだが、大谷からシカトされるのを恐れる腰抜けの日本メディアにできるわけないな。

 同じことが大谷の伴侶にもいえる。旧姓・田中真美子という女性はどのような人生を送ってきたのか、27年間の人生で大谷以外の男と恋をしたことはないのか。醜聞大好きの週刊文春や女性誌でさえ、そうしたことに触れる記事が出ないのはなぜなのか。大谷と結婚した女性もまた神になりたまいしか。

 こうした無批判、無節操な日本のメディアの大谷取材が、当然ながらアメリカでひんしゅくを買っているようである。

 MLBを取材しているフリーランスライターの内野宗治はプレジデント・オンライン(5月17日)で、日本の記者たちが追っかけるのは日本人、特に大谷だけで、そのためには岩をよじ登って球団側に排除されても恥じない、自国中心で身勝手な取材のやり方だと批判している。このような取材方法を、「大谷にまとわりつくハエのよう」「メディアサーカス」と評しているそうだ。

 私のカミさんが5月の連休にニューヨークへ行ったが、テレビをつけてもマンハッタンを歩いていても「Ohtani」という文字を見ることは一度もなかったという。

 日本のメディアよ、大谷一人にバカ騒ぎしていないで、「関心領域」をもっと広げるべきだ。(文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)