ヴァイオリニスト、大谷康子がデビュー50周年記念特別コンサート 壁を越え未来に向かう

AI要約

バイオリニスト、大谷康子がデビュー50周年を迎える。記念特別コンサートでは、民族・言語・思想の壁を越え、未来に向かう音楽を披露する。大谷は音楽の力で世界平和を目指し、50年の活動成果を共有したいと語る。

大谷康子が音楽の力を実感した出来事として、国連での演奏体験や、同時多発テロや自然災害、軍事侵攻時に音楽活動を通じて力を発揮してきたことを挙げる。これらの事例に触れ、音楽の持つ力を再確認した。

コンサートでは、大谷のソロ演奏やクヮトロ・ピアチェーリによる演奏など、多彩なプログラムが組まれている。前半は痛ましい感情を呼び起こす作品に対し、後半は未来への希望をイメージさせる曲で構成されている。

ヴァイオリニスト、大谷康子がデビュー50周年記念特別コンサート 壁を越え未来に向かう

バイオリニスト、大谷康子がデビュー50周年を迎える。記念特別コンサートを「民族・言語・思想の壁を越えて未来に向かう音楽会」と名付け、自分の強い思いを反映した多彩なプログラムを立てた。「音楽の力で世界を平和にしたい、とさまざまな活動をしてきました。50年の成果を聴いてもらうコンサートをただやるだけではお客さまが受け身になってしまう。私がずっと続けてきた思いを共有してもらう、聴衆の人たちと一体になれるように考えました」と話す。

■テロと震災、軍事侵攻

東京芸術大在学中、名古屋フィルとメンデルズゾーンのバイオリン協奏曲を共演してから50年。大谷に音楽の力を確信させるに至った出来事を4つ挙げた。8歳のとき、アメリカで団体演奏旅行をして国連で演奏したこと。2001年9月11日の米同時多発テロ、11年3月11日の東日本大震災、22年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻。

「音楽が持っている力は大きい、と子供の頃から感じていました。8歳のとき、国連で私たち子供の演奏を聴いてもらいました。そして絶対演奏家になろうと思いました。同時テロの日、東京交響楽団のツアーでトルコのイスタンブールにいました。コンサートがなくなりそうだったのですが、こういう時だからこそと行いました。東日本大震災にさまざまな援助をしてくれた30カ国の人を招き、演奏会をしました。15年にキエフ国立フィル(現ウクライナ国立フィル)と共演して、現地の定期演奏会に招かれるようになったのに戦争が起こりました。音楽を続けてきたから大事件に遭遇し、そのたびに音楽の力を感じました」

■痛ましい感情と、未来と

コンサートのプログラムは大谷のソロによるラヴェル「ツィガーヌ」。大谷が第1バイオリンを務めるクヮトロ・ピアチェーリによるショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第8番」、R・シュトラウスの「メタモルフォーゼン(変容)」。後半はクレンゲル「ヒムニス(讃歌)」、萩森英明「バイオリン協奏曲『未来への讃歌』」を世界初演する。

「クヮトロ・ピアチェーリはチェロの苅田雅治さんがどうしても一緒にやりたいと5年も待ってもらい、05年に結成しました。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏全曲演奏などで文化庁芸術祭賞大賞をいただきました。第8番は『ファシズムと戦争の犠牲者の思い出に』とあります。ショスタコーヴィチの思いが乗り移ったかのようにつらい演奏会でした。『メタモルフォーゼン』は第2次世界大戦末期に作曲されました。複雑な曲です。聴衆の方々がどのように感じるのか、問いかけてみたいと思いました。痛ましい感情を感じさせる前半に対し、後半は未来をイメージしています」