いま再びのホラーブームで注目!雨穴(うけつ)さんスペシャルインタビュー

AI要約

話題沸騰の『変な家』が象徴するように、今、ホラーブームが来ている。ウェブライターである雨穴が執筆した『変な家』が一大ムーブメントを巻き起こし、ホラー小説としてベストセラーとなった。雨穴は日常から生まれた独特の文章運びで、怖い世界観を読者に提供している。

雨穴はホラーミステリーというジャンルを選び、古典的なホラーの影響を受けて『変な家』を執筆。そのわかりやすさとエンタメ性が幅広い読者に受け入れられた。

モキュメンタリー手法による『変な家』のリアリティは読者をゾクッとさせ、そのキャラクターも必然的に怖いものに。それでも、雨穴はもっとさわやかな作品を書くことも考えている。

いま再びのホラーブームで注目!雨穴(うけつ)さんスペシャルインタビュー

話題沸騰の『変な家』が象徴するように、小説や映画はもちろんYouTube動画やSNS発の作品まで、今、再びホラーブームが来ています! そんな“ちょっとこわ~い”世界、一緒に覗きませんか?

●雨穴 UKETSU

PROFILE

覆面で活動するウェブライター、ホラー作家、YouTuber。’18年よりウェブメディア「オモコロ」で執筆活動を開始。投稿作品『【不動産ミステリー】変な家』とYouTube動画が話題に。加筆し’21年に小説『変な家』(飛鳥新社)を出版。他の著書に『変な絵』(双葉社)、『変な家2~11の間取り図~』(飛鳥新社)など。

【写真】『変な家』(飛鳥新社)、『変な絵』(双葉社)、『変な家2~11の間取り図~』(飛鳥新社)

この間取り、どこかおかしい……

今、世界的にホラー作品が次々生み出され、日本でもホラー人気はますます熱いものに。その火付け役の一つが小説『変な家』(シリーズ累計250万部突破!)。知人から相談を受けて“ちょっと変な”住宅の間取り図を手にした筆者が、知り合いの設計士の手を借りて、そこに隠された恐ろしい秘密を暴いていく――。一つのウェブ記事から一大ムーブメントを巻き起こした雨穴さんに、誕生秘話をお聞きしました。

「最初は『ウケないだろうな』と思っていました。ネットでは派手で簡潔なものほどバズるので、モノクロの間取り図しか出てこないうえに、長々と説明的な言葉が続くこのコンテンツは、人気が出るはずはない、と。でも、いざ公開すると瞬く間に拡散されたので驚きました。その後すぐに出版社から声をかけていただきまして『続きを書いて一冊の本にしましょう』と言われました。だいぶ悩んだのですが『まあ、でもせっかくだからやってみるか』と」

どこまでも力が抜けた雨穴さんですが、「でも頑張って考えました」と、第二章以降はすべて書き下ろし、ベストセラー小説『変な家』が誕生しました。

「当時はスーパーで働いていたので、忙しかったですね。しかもフルタイムなので大変でした。仕事をしながらアイデアを考えて、在庫数を書き留めるふりをしてメモする……みたいな毎日でした」

そんなごく普通の日常の中から生まれたとは思えない雨穴さん独特の文章運び、次第にゾクッと冷えてくるような世界観は、多くの人を魅了します。

「活動を始めた頃はおもしろくて笑えるものを目指していたのですが、どこか無理しているような感覚もありまして。では、自然体で作れるものは何だろうといろいろ試した結果、ホラーに落ち着きました。ホラーの中でも謎解きを主軸とする『ホラーミステリー』というジャンルですね。『変な家』は江戸川乱歩の影響もあって、古典的なホラーミステリーになりました。例えば“この後、あのような恐ろしい出来事が起こるとは、当時の私は思いもしなかった”など、古めかしい表現が随所に出てくるのですが、そういったわかりやすさが、お子さんたちにも喜んでいただけたのではないかと思っています」

目指していたのは「文芸作品としての質」よりも「エンタメとしてのわかりやすさ」だったそうです。

「当時はズブの素人でしたから、格式高い文学作品を目指そうだなんて思ってはダメだ、とにかくわかりやすくておもしろいものを作ろうと考えました。幸い、オモコロというメディアで、読みやすい文章の作り方を勉強していたので、その経験が生きました」

ドキュメンタリーを装った“モキュメンタリー”手法による、お化け以上にゾワッとさせる“ヒトコワ”。そのリアリティに、“実在するのでは!?”とネタ元探しが行われるほど。でも、そのキャラクターの生まれ方はというと。

「まずストーリーを考え、その後にキャラクターを作っていきます。『こんな殺し方をする人はきっとこんな性格だろう』という感じで、必然的に怖いキャラができてしまうんです。本当はもっとさわやかな人を書きたいんですけどね……」