晩夏の2大長寿特番『鳥人間コンテスト』では泣けるのに…『高校生クイズ』で泣けなくなった理由

AI要約

業界内で夏の終わりを告げる2つの特番、『鳥人間コンテスト』と『全国高等学校クイズ選手権』が40年以上の歴史を持つが、視聴率や評判に違いが生じている。

『鳥人間コンテスト』はシンプルなコンテスト形式を守り続け、自分との戦いという要素が強い。対して『高校生クイズ』はコンセプトの変更や難問化など複数の試みを経てきた結果、視聴者からの支持を失いつつある。

制作サイドが時代に合わせて変えようとした経緯があり、『高校生クイズ』への期待感が失われつつあることが問題とされている。

晩夏の2大長寿特番『鳥人間コンテスト』では泣けるのに…『高校生クイズ』で泣けなくなった理由

業界内では「これが放送されると夏も終わり」と言われる2つの特番がある。

1つ目は「自作人力飛行機による飛行距離および飛行時間を競う大会」の『鳥人間コンテスト』(読売テレビ制作・日本テレビ系、以降『鳥人間』に略)で、2つ目は「高校生たちによるクイズ版・甲子園」の『全国高等学校クイズ選手権』(日本テレビ系、以降『高校生クイズ』に略)。

『鳥人間』は1977年から48年、『高校生クイズ』は1983年から42年の歴史を持ち、どちらも例年8月最終週から9月上旬で放送されている。

どちらも晩夏の風物詩として定着し、今年も4日に『第46回鳥人間コンテスト2024』、10日に『第44回全国高等学校クイズ選手権』が放送された。

しかし、近年は手堅く視聴率を獲り「泣ける」「感動した」などの声があがる『鳥人間』に対して、『高校生クイズ』は数字・評判ともに低迷している。少なくとも日本テレビ以外のテレビマンと話していると、「『鳥人間』はいいけど、『高校生クイズ』は難しいだろう」という声があがるのは確かだ。

ともに40年を超える歴史を持つ晩夏の2大特番は、なぜ明暗が分かれつつあるのか。

どちらも「年に一度の大会」で「類似番組がない」という希少性の高さは一致。また、だからこそこの大会に懸ける思いの強さも近いものがあり、ともに懸命な姿が見られるのだが、視聴者の見方は違うものになっている。

まず『鳥人間』は「どれだけ遠くへ飛べるか」という誰もが理解できるシンプルなコンテストで、ルールなどの基本的なことはほぼ変わっていない。競う相手チームがいて順位を決めるものの、それ以上に気象条件や「ベストを尽くす」という自分との戦いがベースになっている。

そのため過去には、1997年に台風で「全競技中止」になったほか、開催されても「この部門は競技不成立」などの苦しい事態に陥ることもあった。若干の変更こそあるが、愚直なまでに大会形式を守り続けてきたことが存在価値につながっている。

一方、『高校生クイズ』はこれまで何度もコンセプトを変えてきた。もともと一世を風靡した「『アメリカ横断ウルトラクイズ』の高校生版」という位置付けで誕生したため、そのムードはまさに「クイズ選手権」。王道のクイズバトルが行われていたが、徐々に実験、スポーツ、歌、推理、料理などのゲームをかけ合わせたような問題が増えていった。

しかし、2008年からの5年間は「智力の甲子園」を掲げて超難問を解く大会形式に変更。売りの1つだった全国各地でのロケは行われず、高偏差値の高校生が学力をベースに競い合うような大会になり、賛否の声があがった。

その後、再び『アメリカ横断ウルトラクイズ』を踏襲した「クイズ選手権」の形式に回帰したあと、2018年からの4年間は「地頭力」「ソウゾウ力」などをテーマに思考力を問う形式に大きく変更。全国の高校クイズ部員たちを落胆させ、批判の声も多かったからか、純粋にクイズの実力を競う形式に戻し、現在に至っている。

このような紆余曲折は制作サイドが、良く言えば「時代に合わせて変えようとしてきた」、悪く言えば「視聴率が獲れそうな形を探り続けてきた」ということだろう。ただ、度重なる変更に振り回され、『鳥人間』のような一貫性に欠ける『高校生クイズ』への期待感を徐々に失っていく視聴者は少なくなかった。