『海のはじまり』大切なものに別れを告げた夏と海の決断 目黒蓮が体現した苦悩と誠実さ

AI要約

夏が、娘との新たな生活で直面する選択と課題について考える。

夏と娘の関係性や、娘の決断による名字の変更に注目。

海と夏が別々の人生を手に入れるために、大切なものに別れを告げる。

『海のはじまり』大切なものに別れを告げた夏と海の決断 目黒蓮が体現した苦悩と誠実さ

 すべてを手に入れられる人生なんてない。だからこそ、何かを得るためには、別の何かを手放さなければならないのだ。そしてそれは、大人も子どもも同じように直面すること。フジテレビ系月9ドラマ『海のはじまり』第10話では、そんな“どっちも”を選べない残酷な現実を、ひしひしと感じさせた。変化は避けられないかもしれないけれど、その過程で海の気持ちを最優先に考えていこうと、夏(目黒蓮)は心に誓うのだった。

 夜遅く、夏はPCで「ひとり親支援」について熱心に調べている。机の上には育児の本がちらばっている。長年付き合ってきた弥生(有村架純)と別れ、小さな娘の海(泉谷星奈)と2人で生活していくことを決意したばかりだ。

 海の学習ドリルを手に取った夏は、名前を書く欄が空白なのに気づく。ペンを取り出し、「南雲」と書こうとするが、途中で止まる。海の苗字をどうするべきか、悩みながら考え込む。

 悩みを抱えた夏は、会社の先輩である藤井(中島歩)と居酒屋で話をする。夏は勇気を出して打ち明ける。実は娘がいること、そしてこれからその娘と2人で暮らすつもりだと。藤井は妻が入院した時、子どもの世話だけでも大変だったと、自分の経験を話し始める。子どもにストレスをかけたくないと熱心に語る夏に、藤井は「親がストレスでボロボロになったら子どもに二次災害だよ?」と忠告するのだった。

 自覚や責任感だけでは、子育ては乗り越えられない。お金も必要だし、現実的な生活環境を整えることが不可欠だ。場合によっては、海の転校も避けられないかもしれない。そんな「変化」は、まだ小学生である海にとって簡単に受け入れられるものではないだろう。大人の都合でしかないのだが、一緒に暮らしていくためには避けて通れない課題の数々に夏は頭を悩ませる。

「ママがいなくなって、海の生活はすでにたくさん変わったのに。どうしてまだ海が変わらなきゃいけないの?」

 確かに、海には海なりの事情がたくさんある。でも、それも海に直接聞かなければ本当のところはわからない。海が学校帰りに津野(池松壮亮)に会っていることも、水季(古川琴音)と行った場所をひとつひとつ大切にしていることも、夏はまだ知らないのだから。

 夏と別れた弥生は、「ママにはなれない」という現実を、自ら海に伝える。海のことも、夏のことも嫌いになったわけではない。ただ、家族として一緒に暮らすことはできないのだ。それでも「海ちゃんのママにはなれないけど、友達にはなれる」。さらに弥生は海に約束する。「何かあったらいつでも相談して、ちゃんと聞くから」と。

 一方、夏は自責の念に駆られていた。賑やかな南雲家の生活から、海を奪うような形になってしまったことに深く落ち込んでいたのだ。誰も傷つけない完璧な選択など、この世にはない。かといって、自分が傷つけばそれでいいというわけでもない。それは水季からの手紙の中で、弥生自身が教えられた言葉でもあった。

 転校して一緒に暮らすか、転校せずに別々に暮らすか。夏は海に選択を委ねる。「ずっとはないよ」と夏は正直に伝える。誰よりもずっと一緒にいたかった相手である、水季との別れを経験している海だからこそ、夏は正直に伝えたのだろう。「できるだけ長く一緒にいることを考えて決めた」という誠実な答えは海にもしっかり届いたようだ。

 次に夏は海に、名字を選ぶよう求める。海は即座に「月岡になる」と答えを出す。あまりにも決断の早いことに驚いた夏が確認をしても、「大丈夫、変える」と海は揺らがない。南雲という名字が変わってしまっても、海には「さんずい」があるから。「さんずい」は海にとって、大好きなママである水季とのつながりを表す大切なものだった。自己紹介でも海がさんずいを強調する場面が印象的だったが、それは海の中で、母とのつながりを象徴する要素だったからなのだろう。

 それぞれ大切なものに別れを告げ、お揃いの名字と新しい暮らしを手にすることを決めた海と夏。2人のこれからの生活が、どうか温かいものであることを願わずにはいられない。