私の推しシワンは体脂肪6%!「ボストン1947」自問自答をさせてくれる作品だった

AI要約

ベルリン・オリンピックで金メダルを獲得し、日本代表として出場したソン・ギジョンの物語。彼が戦後の混乱の中で挑むボストン・マラソンへの再挑戦と、そこで待ち受ける困難について描かれている。

ソン・ギジョンが愛国心やアイデンティティを守るために掲げた抵抗の姿、その信念によって人間としての強さを感じる。

作品を通じて、スポーツや国際大会の意義、選手たちが命を懸けて競技に挑む姿に対する新たな視点を得る。

私の推しシワンは体脂肪6%!「ボストン1947」自問自答をさせてくれる作品だった

思い返せば、パリ・オリンピックにとても勇気づけられた夏だった。国を背負ってたたかう選手たちを見て、アスリートはすごいな、やっぱりスポーツは熱いな、といった素直な気持ちだけで応援していた私の価値観は、この作品「ボストン1947」によってグッと掘り下げられることになる。

1936年、ベルリン・オリンピックで金メダルに輝いたソン・ギジョン。当時、朝鮮が日本の統治下にあったことから、日本代表の孫基禎(そん・きてい)として出場した彼は、表彰台で胸元の日本国旗を隠したことで制圧を受け、競技からの引退を強いられてしまう。45年、祖国が日本から解放されてもなお米ソによる軍政で混乱が続くなか、酒に溺れ荒れた生活を送っていたソン・ギジョン。ある時、ベルリン・オリンピックで時を同じくして走った銅メダリスト、ナム・スンニョンからの声がけに心が動き、彼は監督という立場で47年のボストン・マラソンを目指すことになる。戦後の混乱の中、自身が受けた屈辱や無念を晴らすために望んだのは、チームが祖国の国旗を身につけ、選手が本名で走ること。才能ある若き選手、ソ・ユンボクとともに再び走り出した彼らを待ち受ける数々の困難。一筋縄ではいかないボストンへの挑戦が行き着くゴールとは……。

表彰時に胸の日の丸を隠したソン・ギジョン。当時のオリンピック新記録で金メダルという、素晴らしい結果とは裏腹な暗い表情に胸を締め付けられた。祖国の国旗を付けられず、名前を変えなければ走ることが許されなかったなかで、プライドやアイデンティティーを守ろうとした彼の最大限の抵抗だったのだろう。愛国心や祖国への忠誠心だけではない、ランナー一個人の存在を証明しようとし続けたその静かな行動と信念に、人間としての計り知れない強さを感じた。

冒頭にあげた今年のパリ・オリンピックでも、選手が祖国の国旗を掲げる光景をよく目にした。これまでは、その様子から喜びや誇りだけを感じ取っていた私だが、この作品を通して、その奥にはソン・ギジョンたちのように競技を通して大きな力に命懸けであらがった人々がいたことを知った。そうすると、単にかっこいい!すごい!だけでは片付けてはいけないスポーツの奥深さや国際大会の意義を考えさせられ、歴史やそれぞれのパーソナリティーなど、より多角的な面から関心を持つことができる。五輪の熱が冷めない今このタイミングで公開されたことに心から感謝したい。