最終回が「むごすぎる」 見届けるにも覚悟の要るロボアニメ『勇者ライディーン』とは

AI要約

『勇者ライディーン』は、ロボットアニメの歴史において重要な作品であり、富野喜幸氏が監督を務めた初のロボットアニメ作品である。

『勇者ライディーン』の制作にはオカルト要素が取り入れられたが、制作局の要望により排除されるなど、混迷の中で制作された。

作品に登場するキャラクター、特に主人公と悪役の人気が高く、製作者にとっても初めての試みであった。

最終回が「むごすぎる」 見届けるにも覚悟の要るロボアニメ『勇者ライディーン』とは

 1975年から76年にかけてTV放送されたアニメ『勇者ライディーン』は、ロボットアニメの歴史を語るとき、絶体にはずせないタイトルのひとつです。ロボットの世界に「神秘」や「伝奇」といったオカルト要素を持ち込んだ最初の作品であり、のちに『機動戦士ガンダム』を生み出した富野喜幸(現:富野由悠季)氏が初めて監督を務めたロボットアニメという点も見逃せないものがあります(第27話以降は長浜忠夫氏に交代)。

 もし富野監督に『ライディーン』で得た経験がなければ、『ガンダム』も誕生しなかった可能性すらありえます。現在、世界中で人気を博している『ガンダム』の源流ともいえる存在が『勇者ライディーン』といえるのではないでしょうか。

 また富野氏と同様に、『ガンダム』で作画監督およびキャラクターデザインを務めた安彦良和氏にとっても初めてキャラクターデザインを手掛けたのが『ライディーン』なのです。はかなげな危うさを持つ主人公「ひびき洸(あきら)」と美形悪役の「プリンス・シャーキン」は、特に女性からの人気が極めて高いものでした。第27話でシャーキンが戦死した際には、長浜監督あてにカミソリ入りレターが届けられる事件も発生しています。繊細な手仕事であるアニメ制作者へのカミソリレターは、時として致命傷となる危険性もあるため、決してやってはならないことです。シャーキンの人気がどれほどのものだったのかを物語るエピソードといえるでしょう。

 しかしながら富野監督の述懐によれば、制作現場はかなり混迷状態にあったことがうかがえます。企画段階では当時、流行していた超能力などの超常現象やオカルト要素を盛り込む予定でした。ところが制作局であるNETの親会社である朝日新聞はオカルトに対し批判的な立場であり、1クール(第13話目)のストーリーが固まったところで、業務命令としてオカルト色の排除が言い渡されたそうです。

 制作現場のスタッフや関係者からバラバラの要望、要求を突き付けられた富野監督は板挟みとなり、結果、降板へとつながります。しかし富野氏は降板後も現場に踏みとどまり、長浜監督から大きな影響を受けながら経験を積み重ね、後に数々の傑作アニメを生み出すこととなりました。