意外な組み合わせだけど相性抜群!?ハーレイ・クインらがファンタジー世界に飛び込む「異世界スーサイド・スクワッド」のおもしろさ

AI要約

「異世界スーサイド・スクワッド」は、DCコミック原作の「スーサイド・スクワッド」を元にしたアニメーションシリーズで、ヴィランたちが異世界で危険なミッションに挑む物語だ。

主人公はハーレイ・クインをはじめとするスーサイド・スクワッドの面々で、異世界で新たなミッションに挑む際に自らの能力が増幅されるなど、痛快な展開が続く。

物語にはスリリングな要素やキャラクター同士の関係性も盛り込まれ、ハーレイとジョーカー、アマンダ・ウォラーなど映画版でもおなじみのキャラクターが登場する。

意外な組み合わせだけど相性抜群!?ハーレイ・クインらがファンタジー世界に飛び込む「異世界スーサイド・スクワッド」のおもしろさ

DCコミック原作で、ハリウッドでの映画化により日本でも知名度を上げた「スーサイド・スクワッド」。ヴィラン、すなわち悪党たちが結集し、チームを組んで困難なミッションに挑むという物語は、いわゆるスーパーヒーローものとはひと味もふた味も異なる魅力を振りまき、熱烈な支持を得た。この世界観を生かしたアニメーションシリーズ「異世界スーサイド・スクワッド」が好評放送&配信中だ。DCのバックアップを得て、日本で制作されたこのシリーズ、映画に負けず劣らずおもしろい。そんな本作の魅力を探ってみよう。

■ハーレイ・クインらDCの人気ヴィランが異世界ファンタジーに!?

まずは簡単におさらいを。「スーサイド・スクワッド」映画版は2016年の『スーサイド・スクワッド』と2021年の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』とこれまで2作が作られており、好評を博した。いずれも、政府機関に逮捕・拘束された超極悪犯罪者たちが、減刑と引き換えにとてつもなく危険な任務に挑むストーリー。犯罪者たちは全員クセ者ばかりだが、なかでも人気キャラクターとなったのは、『バービー』(23)のマーゴット・ロビーが演じたハーレイ・クイン。自由奔放で天真爛漫、無邪気に暴れ回る姿は、キュート&セクシーな魅力も相まって観客を釘付けにし、スピンオフ作品『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(20)も作られた。

「異世界スーサイド・スクワッド」でも主人公格はハーレイと言ってよいだろう。彼女をはじめとする凶悪囚人たち、通称“スーサイド・スクワッド”に与えられた新たなミッションは、次元の異なる異世界に飛び、未知の資源を確保すること。ところがこの世界には魔法が存在し、エルフや獣人、オーガ、オークといった様々な種族が暮らす「ロード・オブ・ザ・リング」のような場所で、また王国と帝国からなる二つの陣営が激しい戦闘を繰り広げていた。異世界に着いて早々、王国側に囚われたハーレイたちは、任務遂行のために王国に協力して帝国との戦いに身を投じていく。地球の常識が通用しないこの世界を駆け巡り、彼らは無事に元の世界に帰還することができるのか!?

■デッドショットにピースメイカー、キング・シャークらキャラ立ちまくりのスーサイド・スクワッド

注目すべきはやはり、スーサイド・スクワッドを構成する面々のキャラのおもしろさ。ハーレイ・クイン(声:永瀬アンナ)のほか、百発百中の射撃の腕を誇るも荒っぽくて口が悪いデッドショット(声:山口令悟)、病的なほど平和を愛するがゆえに、そのためなら暴力も辞さないピースメイカー(声:子安武人)、ナルシスト全開の俳優で体を泥に変えられるクレイフェイス(声:福山潤)、サメの姿をした怪力で食いしん坊のメタヒューマンのキング・シャーク(声:木村昴)という5人が奮闘する。映画版に登場したキャラも多いので、記憶に残っている方もいるだろう。ともかく、皆が皆、手前勝手なアウトローで重罪人だからチームワークも乱れがちだが、それでも息が合えば奇跡も起こる。そこに痛快な味が生まれるというワケだ。

■死と隣り合わせの危険なミッション

もちろん、物語にはスリリングな魅力が宿る。スーサイド・スクワッドのメンバーは脱走防止のために首に爆弾を埋め込まれており、72時間おきに一定のポイントにいないと爆死してしまう。にもかかわらず、王国の治安を乱したとして投獄されたり、戦闘に駆りだされたりと大忙しなのだ。ミッションと共に、自分の命の心配もしなければならない時限設定。さらに、次々と現れる難敵や宿敵も緊張感を盛り立てる。

彼らを迎え入れる異世界のミステリーも興味を引きつける要素。スーサイド・スクワッドを拘束した王国の女王アルドラ(声:能登麻美子)は鉄面皮で本心を明かさないし、対立する帝国側も想定外の武力を次々と放ってくる。王国のプリンセス、フィオネ(声:上田麗奈)もなにやら過去に秘密があるようだ。清楚で可憐なフィオネは民が飢えていることを憂う良心的なキャラでもあるが、スーサイド・スクワッドの面々と奇妙な信頼関係を築く。悪党たちがプリンセスと交流する物語は名作『ルパン三世 カリオストロの城』(79)を彷彿させるものがあり、これまた興味深い。

■「スーサイド・スクワッド」らしく異世界を暴れ回る!

「異世界もの」作品としてのお決まりもきちんと踏襲されており、言葉の壁は女王の魔法によってクリア。さらに、もともとかなりの戦闘力を保持するスーサイド・スクワッドの面々だが、異世界に来たことでそれぞれの能力が増幅され、無双状態の強さを手にしている。しかし、そんな彼らの前に立ちはだかるのが、帝国陣営に与している先遣隊のヴィランたち。ネズミと意思疎通ができるラットキャッチャー(声:上田燿司)に天才マッドサイエンティストのシンカー(声:大塚芳忠)、古代の魔女エンチャントレス(声:伊藤静)、ワニ男キラークロック(声:木内太郎)らもまた同じく能力が強化されており、かつて王国の住人だった獣人やエルフを洗脳して大軍で襲いかかってくる。加えて、ハーレイとなにやら因縁ありそうな妖刀使い、カタナ(声:安済知佳)の存在も気になるところ。

一方で、そんな強敵を前に、チームワークなどはないにも等しい、その場のノリと勢い、機転を駆使して乗り越えていくところはいかにも「スーサイド・スクワッド」。特に、エルフ軍を率いるシンカーとの戦いにおいて、ピースメイカーがエルフの一人を拉致し、苛烈な拷問にかける作戦はヴィランである彼らだからこそできる所業だろう。エルフたちは互いの精神がつながっており、あまりの痛みで軍の指揮系統が壊滅。拷問にかけられたエルフが瀕死状態になっているのを見た際は、さすがにほかのメンバーも引いていた。

■ジョーカー、アマンダ・ウォラーたちも登場

さらに本作には、ハーレイ・クインの恋人でDCコミック最狂のヴィラン、ジョーカー(声:梅原裕一郎)も登場し、2人のなれ初めがフラッシュバックしたり、かつて彼がハーレイに放ったサイコパスな教えが、困難な局面を打開するヒントになったりもしている。このほか、スーサイド・スクワッドを組織する政府の役人アマンダ・ウォラー(声:くじら)、スーサイド・スクワッドと行動を共にする軍人リック・フラッグ(声:八代拓)など、映画版DC作品でもおなじみのキャラクターが登場し、物語を盛り上げる。

地球のルールが通じないのはハンデだが、裏を返せばルール無用の異世界だからできることもある。ある意味、常識はずれなスーサイド・スクワッドにはぴったりの設定。アニメーションならではの躍動的な世界で悪党たちが繰り広げる大暴れに、ぜひ注目してほしい。

文/有馬楽