『マル秘の密子さん』上杉柊平が見せた優しい眼差し 三角関係をさらに複雑にする仕掛けも

AI要約

夏の夫が謎の転落死を遂げ、彼が立ち去る遥人の姿を目撃したことから、真相に迫る密子と夏。智の協力を得て、遥人の秘密や本当の姿に迫る展開に。

智は、波風を立てずに暮らすことを信条とするが、密子に出会い、自分の本来の正義感を取り戻す。彼女に助けられた経験から、行動する力を持つようになる。

一方で遥人は、九条開発をめぐる陰謀や過去の火災に巻き込まれ、本当の自分と向き合う。彼にとって、「次期社長」の座は名誉や出世のためにしか価値がないのかもしれない。

『マル秘の密子さん』上杉柊平が見せた優しい眼差し 三角関係をさらに複雑にする仕掛けも

 夏(松雪泰子)の夫・丈晴(山中聡)がビルの屋上から転落死した。彼は、密子(福原遥)の姉・鞠子(泉里香)が犠牲となった火事の現場から立ち去る遥人(上杉柊平)の姿を目撃していた。2人の命を奪ったのは、果たして遥人なのか。『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)第5話では、その真相に密子と夏が迫る。

 夏たち家族に危険が及ぶことを懸念し、当初は単独で動こうとしていた密子。そんな彼女に、「一緒に戦いましょう」と手を差し伸べてくれたのは智(清水尋也)だ。密子に出会うまで、なるべく波風を立てず、平穏に暮らすことを信条としていた智。しかし、“死の疑似体験”を経て、彼は自分の声に耳を傾け、それに基づいて行動できるようになった。

 密子が鞠子のノートPCを遥人に奪われそうになった時も、彼が九条開発の御曹司であることも気にせず、力づくで奪い返す。その頼もしさに驚く密子だが、彼女が智に助けられたのはこれが初めてではない。玲香(志田彩良)に水をかけられそうになった時も智が庇ってくれた。

 その行動について「気が付いたら体が動いていた」と振り返っていたように、智は初めこそ頼りなさそうな印象もあったが、もともと正義感が強い人間なのだろう。トータルコーディネーターである密子の仕事は依頼者を目的に合わせて生まれ変わらせることではなく、その人の本質や魅力を最大限引き出すことなのかもしれない。意地悪な継母と義姉に灰を被らされたシンデレラが魔法で本来の美しさを取り戻したように、密子の魔法にかかった智は困っている人を助けずにはいられない本来の自分を取り戻したのだ。

 そんな智の好きな食べ物は、レモンのかき氷。謙一(神保悟志)が生前進めていたプロジェクトをめぐり、九条開発から嫌がらせを受けていた鞠子を守っていた人物の好物と一致している。密子が探す“レモンの君”は智なのだろうか。しかし、絶体絶命の危機に陥った密子を救ったのは遥人だった。

 第5話は、さまざまな顔を見せる上杉柊平の演技が印象的だった。次期社長選に向けて夏の味方を増やすため、少々手荒な方法ではあるが、九条家にまつわる黒い噂を流し始める密子。半年前の火事も遥人が地上げ目的で起こした放火であるとする週刊誌が発売されることになり、美樹(渡辺真起子)は名誉毀損で訴えようとする。だが、当の本人は動揺を隠せない様子。鞠子や密子から向けられた「あなたみたいな人間に社長なんて務まるんですか」という言葉を何度も反芻する姿は、エリートを気取った普段の遥人とは異なり、人間らしく見えた。

 智に関節技をかけられた時も情けない声を上げていたように、本当の遥人は完璧な人間なんかじゃなく、弱いところも多々あるのではないだろうか。だが、そんな遥人に美樹や秘書の坂東(黒羽麻璃央)は九条開発の後継者として堂々としていることを強いる。坂東に至っては冷静さを取り戻させるためとはいえ、遥人にビンタをかましたり、夏を都合よく動かすために色仕掛けを使ったりと、密子以上に目的のためなら手段を選ばない人物。以前から美樹とただならぬ関係にあることも匂わされており、彼女に命じられて遥人を何としてでも次期社長に押し上げようとしているのだろう。遥人は、美樹や坂東にとって名誉や出世の道具でしかないのかもしれない。

 しかし、そんな彼らが密子に何かを仕掛けたことが分かると、遥人は会社を飛び出していった。そして、倒れてくる材木の下敷きになりそうになった密子を、身を挺して救い出した遥人。朦朧とする意識の中で鞠子の幻影を見て、「行かないで」と訴えかける密子を見つめる遥人の眼差しはかつてないほどに優しかった。彼もまた気づかぬうちに、密子の魔法にかかっていたのかもしれない。

 敵同士にもかかわらず、夕日に包まれる2人の姿はロマンチックだ。目が覚めた密子が遥人に助けられたことを覚えておらず、智に助けられたと思い込むシチュエーションも、彼らの三角関係をさらに複雑にする仕掛けとして堪らないものとなっている。アクリルスタンドを自作するほど、遥人に熱を上げる千秋(桜井日奈子)の動きも気になるところだ。