【イベントレポート】なぜ石川真生にオファーしたのか?「オキナワより愛を込めて」監督・砂入博史が語る

AI要約

映画「オキナワより愛を込めて」の記者会見が本日8月14日に東京・日本外国特派員協会で行われ、監督の砂入博史が出席。本作は、沖縄を拠点に活動する写真家・石川真生を追ったドキュメンタリーで、写真を通じて愛や歴史、政治、人種差別、乗り越えるパワーを描く。

米ニューヨークを拠点に活動する監督が石川にオファーした経緯や、石川の写真が政治化されることに抵抗する姿勢が語られる。石川が沖縄の歴史や米軍基地の現状に疑問を持ち、写真を通じて人間の側面を捉えていったことも紹介。

作品の意図や対象をめぐる議論や、映画の公開情報が述べられる。監督が作品の進化を語り、特定の対象ではなく幅広い観客に向けて制作したことが明かされる。

【イベントレポート】なぜ石川真生にオファーしたのか?「オキナワより愛を込めて」監督・砂入博史が語る

映画「オキナワより愛を込めて」の記者会見が本日8月14日に東京・日本外国特派員協会で行われ、監督の砂入博史が出席した。

本作は、沖縄を拠点に活動する写真家・石川真生を追ったドキュメンタリー。写真家としてのルーツをたどりながら、ファインダーを通して語られた「愛」、そして作品の背景となった歴史、政治、人種差別、それらを乗り越えるパワーを写真とともに映し出していく。

米ニューヨークを拠点に活動する砂入が石川に本作のオファーをしたのは、写真集「赤花 アカバナー 沖縄の女」が再出版される際に石川がニューヨークを訪れたときのこと。砂入は「そのときに初めて『赤花』を目にしたんですが、圧倒されました。写真の美しさは言わずもがなですが、テーマが面白いと感じたんです。1970年代の沖縄の女性、そしてアフリカ系の米兵たちを被写体にしている。生々しくて、びっくりしました」と振り返る。そして「石川さんのサイン会のあと、東アジア研究を行っている大学の学部で、助教授が彼女の写真をオーディエンスに見せながら講義を行いました。そこで『これは沖縄の女性たちの闘いを捉えた写真だ』と説明していた。当時、石川さんは体を屈めながら見ていて、がんが再発したと聞いていたので、僕たちは彼女の体を心配していたんです。ところが、講義が終わるとものすごい形相で立ち上がって、『私の写真を無断で使って、講義するのは断じて許さん』『私の写真を政治化しないでください。写真で語ろうとしているのは政治ではなく、愛なんです』とおっしゃった」と回想した。

当時、石川はニューヨークの大学で1945年から72年の沖縄返還までの経緯を語ったそう。砂入は「米軍基地ではさまざまな犯罪が横行していて、琉球警察は手が出せない。男も女もレイプ被害に遭い、殺人が起こっても、報じられることはない。そういうことを目の当たりにしながら青春時代を送った石川さんは、なぜ米軍が沖縄にいるのか、なぜ日本政府は黙認しているのかと疑問を感じるようになったそうです」と説明。そんな石川は、バーで働きながら、米兵と付き合う中で、彼らを1人ひとりの人間として知るようになる。砂入は「米兵というカテゴリーから、いい人もいれば、悪い人もいると、1人ひとりを知るようになっていった彼女の歴史はとても興味深いものでした。当時はニューヨークでブラック・ライヴズ・マターの運動が盛んに行われている時期。そんな中で石川さんは、黒人に対するステレオタイプの話をしたり、単刀直入にご自身の体験のお話をしていた。そこでこれはドキュメンタリーにしたい、アメリカの皆さんにお見せしたいと、オファーしました」と明かした。

客席から「日本人、沖縄の方々にこの作品を見せることもとても意味があることでは?」という意見が飛ぶと、砂入は「黒人に対する人種差別について何か捉えたいというのが、この作品を作る動機ではあったんです。でもカメラを回す中で、いろんなテーマが浮上してきました。だから映画がおのずと進化していった。誰かを対象に絞るつもりはないです」と語った。

「オキナワより愛を込めて」は、8月24日より沖縄・桜坂劇場で先行上映。8月31日から東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で公開される。

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