日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2024 音楽劇『あらしのよるに』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】

AI要約

日生劇場ファミリーフェスティヴァルは夏の風物詩であり、音楽劇『あらしのよるに』が毎年楽しまれている。

チラシのデザインや演目の選定について、製作スタッフが子どもや大人の観客層に合わせて工夫している。

日生劇場での特別な体験を作り出すために、作品のスケールや観客の雰囲気も重要に考慮されている。

日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2024 音楽劇『あらしのよるに』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】

チラシとは観客が最初に目にする、その舞台への招待状のようなもの。小劇場から宝塚、2.5次元まで、幅広く演劇を見続けてきたフリーアナウンサーの中井美穂さんが気になるチラシを選び、それを生み出したアーティストやクリエイターへのインタビューを通じて、チラシと演劇との関係性を探ります。(ぴあアプリ・Web「中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界」より転載)

毎年夏に開催される子ども向けの舞台公演「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」。音楽劇『あらしのよるに』はその一演目です。が、カラフルながらクールさもある衣装をまとったふたりのキャスト、シンプルな線画のイラスト、落ち着いた雰囲気のチラシは、ぐっと大人向けの印象。シルバーの線画は角度によって光り方を変え、興味を惹きます。子ども向けの音楽劇でこの雰囲気のチラシを作ったのはなぜなのか、脚本・演出の立山ひろみさん、プロデューサーの大澤拓己さんに伺いました。

中井 「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」は夏の風物詩ですね。1993年からもう31年。

大澤 1963年開場の日生劇場が30周年の際に始めた事業です。日生劇場は日本生命が東京に新しい拠点ビルを建てる際、「文化的な社会づくりに貢献」するため「青少年の将来に役立つ劇場」をつくりたい、という当時の弘世社長の思いで設置されました。開場翌年からは劇団四季制作のミュージカルに小学生を招待する事業をはじめました。ファミリーフェスティヴァルは家族づれで楽しんで頂く事業で、近年ですとバレエ、クラシックコンサート、人形劇やダンス、ミュージカルや音楽劇から4つ程度のジャンルの公演を開催しています。

中井 『あらしのよるに』は今回で3回め。

大澤 2019年、2021年、そして今回です。2021年は全国巡回もいたしまして、巡回公演では音楽に手拍子が起こったりもしました。

立山 手拍子は衝撃でした。東京よりもさらに舞台に接する機会の少ない子どもたちが心を開いて、この短時間に楽しもうとしてくれてるっていうのがすごくうれしくて……。『あらしのよるに』については、私がお声がけいただいた段階で演目は決まっていました。そこから、音楽を時々自動の鈴木光介さんにお願いしよう、振付は山田うんさんに、と作っていったかたちです。

中井 ご覧になる方の年齢層はかなり意識していますか?

立山 やはりお子さんに観ていただくことを思うと、あまりに言葉が多すぎると理解が追いつかない可能性が出てくる。だから感性に訴えかけるものにしたくて。「どこを観ていてもいいよ」という形にしようと、身体表現を多用した演出にしています。十数人もの演者が嵐になったり、ストーリーテラーになったりと変化していく。もともと原作は、ほとんどの場面でオオカミのガブとヤギのメイしか出てこないのですが、それを日生劇場に合うサイズの作品にするという意識もありました。

中井 なるほど、作品のサイズ感も重要ですよね。

立山 日生劇場はやはりとても素敵な劇場なので、みなさんちょっとおしゃれしていらっしゃるのも素敵だし、お子さんの反応をご両親が楽しんでいらっしゃるのもいい光景です。劇場に行くという体験自体が、ワクワクするものとして残ってくれればいいなと思いながら作っています。

中井 私自身、日生劇場に伺うたびに本当に美しい劇場だなと思います。ここでやるからこそ、特別な体験になりますよね。